短編小説 | ナノ
表か裏かマグネット
風がだんだんと暖かくなってきた。
そんなことを感じられるようになって、ここしばらく。
わたしも、やっと恥ずかしいのを忘れて彼に話しかけられるようになった。
まさかそんな、意味が違って国の間を橋が渡ってるなんて思いもしなかったから、誤解だって伝えはしてもなかなか普段通りに戻ることが出来なかった。
彼も、わたしも、うまく視線を合わすことができなくて変な笑みを浮かべてみたり。
誤解であって、否定では……ない、のかな。
わたしは少なくとも彼のことが嫌いではないし、とても好き……だとは思う。
でもそれを、そういう気持ちで捉えたことはなかったから。
だから、余計に恥ずかしくて、照れくさくて、気にしてしまっているのだと思う。
なぁに、これ。
まるで子供みたいだわ。
ギクシャクした関係が続くよりも、ただ笑って傍に居てくれたら、それだけで。
今日の風は暖かい?
窓からの陽はもう春色のよう。
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