Épelons chance | ナノ



85.過去も未来も、共に



真っ青の空に霧のように不鮮明な雲が滲む。島の側端は壁などなく、まるで大地がそのまま切り取られたように断崖絶壁が続いている。遥か下方では海水が波を立てて土の壁に打ち付けて、白い泡を生みながら幾重にも波紋を広げていた。








85.過去も未来も、共に








「獅子戦……」

構えて剣を振り抜く間際、懐から飛び退けるシンク。大振りの太刀は掠りもせずに空を切った。

「とりゃあ!」
「!」

すかさず体当たりしてくるアニスに舌打ちし、拳を振り切ってよろけたトクナガの片腕を掴む。力いっぱい引っ張ってトクナガごと持ち上げると、遠心力に身を任せて彼女を振り回した。

「ぅわわわわあ〜!?」
「どうだい?イオンと同じ顔のボクと戦うってのはさ?」

振り回しながらアニスにそう語りかけた刹那、シンクの足元に譜陣が浮かぶ。それを見てアニスを地面へ叩きつけると、風が舞い上がると同時に身を翻して切りかかるガイの剣を受け止めた。背後で空振りした譜術が風の刃を生んで消えていく。

「譜の力よ……アニス、行くわよ!」
「任せて!神槍の一撃!」

譜術から発生した霧散するはずの音素が起き上がったアニスの体を囲み始めた。先ほど掴まれた腕をぐるぐると回して片手に音素を凝縮させると、「ぐるぐるぐんぐにる!」と叫びながら突き出した腕から光の槍を発射する。ガイの太刀を受けて背を向けたままのシンクは、身構える余裕もなく直撃し、その場から体を吹き飛ばされた。


「アンタはイオン様とは違う!もうその手は喰わないんだからね!」


シンクは崩れた瓦礫にぶつけた体から土埃を払い、顔を拭って立ち上がりながら口の中に入った砂を唾と一緒に吐き出した。胸糞悪そうにこちらを睨む。

 


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