Épelons chance | ナノ
82.錯綜する想い
ようやくプラネットストームが止まった。
あいつらの船が見えた。だから俺は、ローレライの剣を託す為にグランコクマへ向かった。
皮肉なもんだな。
完全同位体のレプリカが造られたことも、ローレライと同じ音素振動数であることも、すべてが煩わしかった。
あいつが生まれたことで俺は家族を失い、婚約者も失い、居場所を失い、名前を失い――存在自体を失った。あんな奴が俺のレプリカだというだけで腹立たしかった。
しかし、忌々しくて仕方がなかったそれらが、今、未来の可能性を作っている。
俺のレプリカなら、最後まで俺の代用をしてみせろ。
俺にはもう時間がない。お前が代わりを務めることができるなら、共に討つことだって。
協力してやってもいいと思った。馬鹿げた妄想の破滅に終止符を打てるなら、それでいいと。
だから俺はお前に鍵を渡して、それで終わらせるつもりだった。
なのに……
「俺はみんなと一緒に全力でお前を師匠の下へ連れていく」
顔を合わせた途端、そう言って奴は俺の腕に宝珠を無理やり掴ませた。
「ローレライを解放できるのは被験者のお前だけなんだ。だから」
……なにを。
なにを言ってるんだ、こいつは。
お前は俺だ。『俺』のくせに、なんで自らが劣ってることを胸張っていいやがる。
「…………ろう」
お前はレプリカだ。能力が劣化してても、“俺”の……“俺”の代わりなんだぞ。
へらへら笑いながら、ルークは言う。
こいつは……どこまで俺を侮辱するんだ。
『全ての屍を踏み越え我が元へ辿り着け。アッシュ、そしてルークよ』
……なんでこんな奴が……
『その時、今一度お前たちに問いかけよう』
なんでこんな奴がヴァンに認められたんだ……!!
「馬鹿野郎!! 誰がそんなことを頼んだ!」
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