Épelons chance | ナノ



81.虹









81.虹







「どう?ミカル、なにか言ってた?」

世界の南端に向かうアルビオールの中で、操縦室に戻ってきたルークへティアが問いかけた。

「なんか、書かれてる内容が殴り書きに近いから、別の意味で解読が必要だって。俺は話されても理解する自信ないけど……」
「あの二人は才に優れていますし、そう時間はかからないと思いますわ」

共に姿が見えないマルクト軍人は、彼女と一緒に別室にいる。ナタリアの微笑みを受けて、ルークは眉間を寄せた。

「うーん。でもジェイドは一緒に解読してる感じじゃないんだよ。つーか、読み解くだけならジェイドがやった方が早いだろ?」
「それもそうね……。ミカルが意地を張って一人で解読をしようとしているとか?」
「だったら大佐はついて行かないと思うけどなぁ」

うーん、と考えに耽る声が共鳴した。そもそも、解読をするだけなら部屋を移る必要があるのか?集中する為に移動したのは納得できるものの、なら二人で行く必要があったのだろうか。そんなことを頭の片隅で考えながら各々が頭を捻る。
そんな中、別の観点から頭を捻っていた彼が口を開いた。

「譜石帯に浮かぶ譜石って、ユリアが未来を詠んだ譜石のことだよな」

彼女らが読み解いている禁書に書かれているのは、『空に浮かぶ譜石帯から、一部の譜石を降下させる創案』が書かれているとミカルは言った。それがどういうことなのか、この世界に住んでいる人間は誰もがわかることだ。

「そうだよ。なんでミカルは今更預言が欲しいと思ってるんだろう?」
「違うと思うわ。彼女は方法論に興味があると言っていたから、何かにその技術を転用したいんでしょう」
「だけど変だと思わないか?第七譜石がその方法で手に入るなら、なんでローレライ教団は禁書に指定してしまったんだ?」

ガイの疑問はもっともだった。預言を重んじるローレライ教は、世界を導く為にユリアの預言を手にすることに必死だったというのに、その計画が丸ごと禁書とされてしまうのは簡単に頷けない。モースのような人間もいる。その存在を封印するには、何か別の理由があるのではないか。

「フーブラス川の研究ってのにそれが役に立つかもしれないんだよな。それもどういうことなんだろう」
「さあ……。科学者の考えることは、わたしたちには理解できないことばかりだもの」

どのみち、その研究についてはマルクトが率先して進めていること。彼らが首を突っ込んでまで聞くことでもない。
考えても無駄、という結論に達した辺りで、話題は変えられた。ミカルとジェイドが二人で何かをしているのは、なにも今回が初めてではないのだ。それに疑問を抱き続ける理由もない。
明るい話に転じて笑い声が飛ぶ中、それでもなお切り替えられない男は一人、雲が流れる景色に目をやりながら頬杖をついた。

(ミカルが一人で解読、ねぇ)

鼻から息を吐いて、気になる軍服を頭の中で思い描く。

(……やらせてるのか?やる気がない……?)

考え込んで空を見つめる瞳に閃光が走った。
その直後、船体の真横を光弾が通過する。軌道を追った先に見えるのはエルドラント。空に浮かぶ島から無数の弾丸がこちらに向かって放たれた。

「なにあれ、砲撃!?」
「ゲートを閉じさせないつもりか!」
「強行着陸します!」

ノエルがそう叫んだと同時に船体が大きく傾いた。
既に目視できているラジエイトゲートへ向けて、アルビオールは更に速度を上げる。対空砲撃の間を潜り抜けるように船体を回しながら、海に浮かぶ孤島へ頭から突っ込んだ。
 


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