Épelons chance | ナノ



80.貴方も私も、こんなにも似ている


「フローリアン」

ここから始まる彼の生に礎を。

「無垢な者。……フローリアン」

穢れない心を映した、まるで鏡のような名を持って、彼はこれからどんな成長をするだろう。
アニスは両手を握って、その瞳をじっと見つめる。
彼女が微笑めば、それに呼応するように柔らかく微笑んだ。


「……イオン様……」


彷彿とさせる笑い顔に、アニスはぐっと唇を噛みしめた。







80.貴方も私も、こんなにも似ている







フローリアンと名付けられたイオンのレプリカを教会で詠師トリトハイムに引き渡し、一同はダアトの街に宿をとった。
誰かが口を開くよりも先に話し始めたミカルは、自身に植わった第七譜石について説明する。教会で見つけて融合してしまったものが、あることを原因に彼女の命に欠かせぬものとなってしまったこと。全ての発端から話せば、アニスは過去を振り返りながら「あの日に……」と思い出そうと首を捻っていた。

「第七譜石が体の中に埋まってるってことか……」

彼女の手は胸に。ルークはそれを見ながら呟いた。

「……それは言えないわよね。誰が聞いているかもわからないんだもの」
「預言を妄執する者もまだ多いですわ。いつどこで、誰がモースのようになるのか……」

ティアもナタリアも目を伏せながら声を落とした。
預言を欲しがるただの市民に殺される未来があったかもしれないのだ。それを考えれば黙っていたことにも納得せざるを得なかった。
しかし壁にもたれかかったガイだけは、そんな彼女に険しい瞳を向けている。

「でも、俺たちには話してくれてもよかったんじゃないか」

少し怒った口調の声が皆の視線を集めた。

「ガイ。ミカルの気持ちもわかってあげましょう。一人で抱える恐怖と戦っていたのはミカルですわよ」
「敵さんが知ってて俺たちが知らなかったんだぞ?アッシュが助けてくれなきゃミカルは死んでたってことだろ」
「だからアッシュに感謝してるんだろ。何怒ってんだよ」

ルークに指摘されて自分の態度が悪いことに気が付いたのか、ガイは目を逸らしながら「怒ってるわけじゃ……」と頭を掻いた。
彼が言いたいことがわからないわけじゃない。先に知っていれば彼女が勝手に行動するのを防げた可能性もある。

「みんなを信用してなかったわけじゃないの。……ごめんなさい」
「ミカル。それはわたくしたちもわかっていますわ」
「何かが起きる前でよかったわ。これから気を付けていきましょう」

頭を下げるミカルにナタリアとティアが微笑んだ。力む頬をほっと緩ませて、ミカルも申し訳なさそうに眉を下げる。
 


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