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79.貪婪に剥がされた帳









79.貪婪に剥がされた帳







「またここに来るなんてな……」


しんしんと降り続ける白い雪を肌に感じながら、瓦礫の先の光を見据えてルークが哀感を漂わせた。
懐かしさが足を止める。そう昔の出来事ではないのに。

「あれから、またたくさんの人が死んじゃったね……」

思い出しながら、アニスが眉間を狭めた。
あの時はここが終点だと思っていたのに。命は数え切れない程、消えた。罪のない人が次々と犠牲になっていく。きっと今も、どこかで。

「もう、終わりにしたいな。こんなことは……」
「終わりにするために来たのですわ」

ガイの目が細くなるのを見て、ナタリアが「そうでしょう?」と続ける。そうだ。今度こそ終わりにしなければいけない。ガイは見上げた空の上に浮かぶ大陸へ視線を逸らし、そうだな、と頷いた。

「……でも、ここに来たのはわたしたちだけではないみたいね」

ミカルは足元を見て呟く。土気交じりの雪の道に、水が溜まっている。ゲートの入り口へ伸びるそれは、恐らく誰かが歩いた痕跡だろう。
こんな場所に来るのが誰なのか、皆それぞれに人物を思い描く。

「神託の盾でしょうね。気を付けた方がいいでしょう」
「リグレットかラルゴかシンクか……」
「全員という可能性もありますね」

エルドラントを絶対のものとする為にはプラネットストームを止められるわけにはいかない。ここは新生ローレライ教団にとっても守りの要なのだ。ましてや敵側は宝珠がこちらの手にあるのも知らない。各地のセフィロトをまだ巡っているのだとしたら、ここに何人いてもおかしくない。
六神将の名前を聞いて、ナタリアは瞳を揺らして目を伏せた。

「ラルゴ……。わたくしは……」
「ナタリア……。大丈夫か?」

ナタリアの声色に振り返ったルークは、彼女の顔から血の気が引いていることに心配そうな目を向ける。無理しない方が、という声に彼女は心を落ち着けるように息を吐くと、「すみません」と告げて顔を上げた。

「こんなに動揺するなんて、自分が情けないですわ。――でも大丈夫です」

自身を奮い立たせるように、漏れ出る光の先を見据えて目を開く。そして背筋を伸ばすと、「参りましょう」と仲間たちへ顔を向けた。

 


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