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78.末揃えば丸と結わん





『あの日、俺は砂漠越えのキャラバン隊の護衛を終えて帰宅したところだった』




翌日、ミカルとジェイドはバチカルから戻ったルークたちにアルビオールで拾ってもらった。
インゴベルト王への報告を終えて戻った彼らはどこかギクシャクしていて、機内でも各自バラバラに過ごしているせいか、いつもと雰囲気が違った。操縦席に残ったままだったティアに何があったのか聞くと、今朝方バチカルに新生ローレライ教団の使者がやってきたと言う。詳しく話を聞けば、使者としてやってきたのはラルゴということだった。







78.末揃えば丸と結わん







預言を廃することで合意したキムラスカは、モースの要求を全て蹴った。それはすなわち、新生ローレライ教団への宣戦布告となる。戦う意志は持たぬとも、国の領土や民が侵されれば黙ってはいないだろう。それこそ全面戦争だ。もはや戦いを避けることはできない。そう判断したインゴベルトは覚悟し、ナタリアへ実父のことを告げた。

「何かの間違いでしょう!?」

激しく動揺したナタリアは、そのまま一人、ラルゴを追って走り出した。生存もわかっていなかった初めて聞く父の話で、彼は敵対する新生ローレライ教団に属していると告げられ、それが幾度も行く手を遮ってきた黒獅子ラルゴだったなんて。そんな彼女の頭の中は困惑で埋まっていただろう。
一人追いかけた先は港。認められない想いを矢に込めて、ナタリアは弓を引き絞っていた。

「……お前は…!……お前は……何故六神将に入ったのです」
「そんなことを俺に聞いてどうする」
「答えなさい!バダック!!」

厳しい瞳に射抜かれたラルゴは、姫君の口からその名を聞いて、ようやく一人で追いかけてきたことに合点がいったようで。彼は妻の好きだった港へ体を向けて、ある日の出来事を語りだした。


「家に変えると、シルヴィアも数日前に生まれたばかりの赤ん坊もいない。いやな予感ってのは……本当にあるんだなぁ」

家の中に差し込む、赤く、赤く、寒気のするほど赤い夕陽。必死になって町中を探した妻は、結局見つからなかった。彼女が発見されたのはそれから数日後。彼は顔を動かしてある一点を見据えると、目を細くして「この港に浮かんでるのを発見された」と告げた。

「シルヴィアは生まれたばかりの赤ん坊を奪われ、錯乱して自害したのだ」

ナタリアを追いかけてきたルークたちも声を失った。そして、話はまだ続く。

「シルヴィアは体が弱かった。だが預言士が、二人の間に必ず子供が生まれる、いや生まねばならぬと言ってな。それがこの結果を導く為だったと知って、俺はバチカルを捨てた」

そして各地を放浪している時にヴァンと出会い、拾われて神託の盾騎士団へ入った。
ヴァンは彼にこういったそうだ。

『預言は星の記憶だ』 と。

星は消滅するまでのあらゆる記憶を内包していて、すべての命は定められた記憶通りに動いている。預言はその一端を人の言葉に訳しているにすぎないだけなのだと。

「ならば、シルヴィアのむごい死も定められていたと?俺は預言を――いや、星の記憶を憎んだよ」

 


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