Épelons chance | ナノ



31.Luke-side



「ネフリーから話を聞きましたね」


ケテルブルクの夜。
一人で知事邸から戻ってきたルークの背中へ、ジェイドが声をかけた。

「……き、聞いてない」

誰にも見つからない様に部屋に戻ろうとしていた為、想定外の声にルークは必死に平静を装おうと声を低くした。

「悪い子ですね。嘘をつくなんて」

分かりやすくどもるルークに、ジェイドは子供を諌めるように静かに言う。ルークは振り返ると、お見通しの瞳に頭をかきむしりながら「……う……なんでバレたんだ」と眉を下げた。
先程まで知事邸で、ネフリーに話を聞いていた。他でもない、ジェイドの昔ばなしだ。


「……でも、ネフリーさんは、ジェイドのこと信じてるって言ってたぞ」

顔を見上げてそう言うと、ジェイドは予想外の言葉だったのか、小さく目を見開いた。

「ジェイド?」
「いえ……。ネフリーは、まだわたしが先生を復活させたがっていると思っていると思っていましたので」

レンズを繋ぐ橋へ手をかけて、彼は一呼吸吐いた。
そんな様子に、ルークはネフリーの言葉を思い出すように「……そうか」と呟いた。

「ネフリーさんは、ジェイドの顔が柔らかくなったって言ってた。ネビリムさんと出会う前よりも、今の方がずっと、って」
「……そうですか」

ひとつ、瞬きをすると、ジェイドは「……そうですね」と続ける。

「大丈夫ですよ。もうネビリム先生の復活は望んでいませんから」
「そうか。なら……いいんだ」

安心したように微笑んだルークはジェイドを見上げ、彼の真紅に映る自分を捉えて続ける。

「ジェイドは、どうしてネフリーさんがそう思うのかとか……考えたりしないのか?」

その言葉に、ハタとジェイドの目が止まる。
少し瞬きの多い彼の様子、そして見当違いの質問に、彼は思わず笑みをこぼした。

「他にも何か聞きましたね?」
「え?い、いや……ネビリムさんのことしか」
「咎められたばかりで嘘をつくのは感心しませんね。誰のことですか?」
「……」

卑しく笑う彼の表情を見る限り、何も隠すことはできないのだろう。ルークは「ごめん……」と溜息を吐き出した。

「ジェイドとミカルは仲がいいっていうのとは少し違う気がするから、ジェイドの本音が聞きたかっただけなんだ」
「ネフリーになんと言われたのかは知りませんが、単なる友人ですよ」
「友達ってだけか?」

妙に力を込めて訊くルークに、ジェイドは「はい」と頷く。

「……そっか」





 


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