Épelons chance | ナノ
76.霧が雨に変わるとき
「ここで待機していろ」
「ハッ!」
青い軍服は、教会の中では妙に目立つ。敬礼した兵士は二人、扉を挟んで立ち並んだ。
カツ、と静かな廊下に響く足音は、待機させた部屋を横目に映しつつゆっくりと離れていく。
褐色の耳の隣で揺れる飾りですら音を残した。
「……よろしいのですかな?」
歩みの先にテオドーロが現れて彼へ問う。
「……どうかな。杞憂であることを願いたい」
振り返って扉へ視線をやれば、笑みを浮かべる余裕すらないことを知った。
76.霧が雨に変わるとき
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