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72.箱から飛び出た世界の叫び











72.箱から飛び出た世界の叫び









「話はわかった。わたしもダアトへ行こう」

預言会議の旨をテオドーロへ伝えると、彼は快く許諾してくれた。
ローレライ教団の最高責任者が彼でよかったのか一同不安はあったものの、イオン亡き今、この会議に参加するのは自分が一番適切だろうと言ってくれた。これで各統領の了承を得ることが出来たということ。ルークとナタリアは嬉しそうに顔を見合わせて安堵の息を漏らす。この会議から今後のこと、そして新生ローレライ教団の対処に打ち出せる。


「ところでお祖父様。街の様子が少し変わっているみたいだけど、何かあったんですか?」

話の流れを変え、ティアが会議室の外を見て尋ねた。ユリアシティは元々あまり盛んな街ではない。監視者の街と呼ばれるだけあって、住まう者たちもあまり外へ交流に出ることは少ないそうだ。しかし、今のユリアシティは以前と比べてもやけに人が多い。それも居住区に限らず通路にまで見慣れぬ顔ぶれが溢れているのだ。旅行者というにはあまりにも静かで、何をするでもなく佇んでいる者が多く感じられる。

「ああ、彼らのことか。他所から逃げてきたレプリカをこちらで保護しているのだ」
「逃げてきた?どういうことですか?」

ルークが聞き返すと、テオドーロは少し困った様子で眉間を寄せた。

「このところ多いのです。亡くなった筈の人間が記憶のない状態で現れたり、葬式に亡くなった本人が現れたりと……」
「レプリカが大量に造られたからですね」

以前ベルケンドで見た突然死のことも同じだが、新生ローレライ教団はとにかくレプリカを造り増やしている。彼らは生まれたばかりで生きる術を知らない。魔物に襲われたり、世間の道理も知らぬ彼らは店の商品に手を出して憲兵に突き出されることも多々あるそうだ。そして、そんなレプリカの中には、酷い虐待を受ける者もいるとテオドーロは教えてくれた。

「フォミクリーで生物レプリカが造られたことも世間で知られ始めています。中には、被験者が死んだのはレプリカが生まれたせいだと非難する人間もおるのです」

実際にそれで亡くなるケースがないわけでないが、その量は多くない。非難される大概は濡れ衣なのだ。

「……でも、生まれたばかりのレプリカには、何も言えない」
「そういうことです」

ユリアシティはダアトと同じくローレライ教団が統べる街と言っても過言ではない。新生ローレライ教団が介入できないこともあり、ここには被験者たちからの圧力はかからない。魔物に襲われぬ土地というのも、たかがしれている。結局、行き場を失ったレプリカたちにとってここは流れ着いた果ての場所なのだ。
しかし、保護する彼らの食糧も無尽蔵ではない。ユリアシティ側の限界もあり、この現状に目をつぶり続けることもできない状態だそうだ。

唐突に生まれ出でたレプリカたちに行き場はないのだ。

 


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