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63.古代より見し禍











63.古代より見し禍









「……そうか。アスランは逝ったか」

謁見の間、玉座に着いたピオニーが静かに声を落とした。

「はい。つきましては、彼を通じて内々に事の真意をキムラスカ王宮に照会するべきかと思います」

ジェイドは言いながらルークへ視線を流す。それを受けて、ピオニーは「ルーク、頼まれてくれるか?」と目を配らせるが、ルークは視線を外すように俯き口吃った。

「俺の話……聞いてもらえるのかな」

横から見えた彼の顔は酷く恐怖をもった瞳をしていて、ミカルの顔がこわばる。
国王といえど自分の伯父と話をするというだけでこんな顔をするだろうか。ミカルの頭に浮かんだのはただひとつだけ。もしかしてこの一ヶ月、彼も同じように…

「なんだ?レプリカだっていじめられたのか?ならガイラルディアと一緒にこっちで暮らすか?」

ミカルが声をかける前にピオニーが笑う。ド直球な言い方に思わず固まるが、隣で「笑えない冗談はやめてください」とジェイドが溜息を吐き出すのを見て途端に力が抜けた。「俺は本気だったんだがなぁ」と尚も笑いながら言う皇帝は、悪びれなく白い歯を見せる。ミカルというレプリカが傍にいる分珍しいものでもないのか、それともガイと一緒にいられる方が彼の幸せだと思うのか。どちらにしても、ガイがマルクトに来たことでルークは気持ちの整理が出来ずらくなっているのだろう。
レプリカだなんだと言っても、ルークがキムラスカとマルクトに平和条約を結ばせたことは紛れもない事実だ。彼はもっと自信を持っていい。ルークが吃りながらもパイプ役を引き受けると、「あとはアッシュの件だな……」とピオニーの瞳はガイへ向いた。

「陛下の推測通り、彼は六神将の生存を知っていました。また、アッシュは『ローレライは閉じ込められた』とも言っていました。その影響で世界中の第七音素の総量が減り、その分を取り返そうとプラネットストームが活性化し、第七音素を作り出す…と」
「あの、ピオニー様。何故アッシュを捜しているのです?」

話を聞くと、ガイはダアトへ報告へ言った後、ピオニーの命でアッシュの捜索をする予定だったらしい。タイミングよくアッシュを追っているルークたちと合流することができ、アルビオールを使って一度接触することができたようなのだ。

「ローレライの鍵を奴が持っているという目撃情報があってな。それがあればプラネットストームの活性化を抑えられるんじゃないかと、そういう話になったのさ」
「しかしガイたちの報告を聞くと、プラネットストームの活性化はローレライがどこかに封じられたことが原因ですよね?それが事実なら、鍵よりもまずその状況を理解するべきではありませんか?」

ジェイドが言う。確かに、原因がわかっているのであればなにかしらの措置を講じた方が得策だ。
皆がうーん、と唸るまでもなく頭を抱えた状況で、アニスがルークへ首を傾げた。

「ローレライの声ってルークにも聞こえるんでしょ?なんか言ってなかったの?」
「うん……。外殻大地を降ろした時以来、ローレライの声は聞こえないんだ」

アッシュに聞こえるのなら、ルークにも。そう考えるのは妥当だが、ルークは残念そうに声を落とす。あの時以来、声と共にやってくる頭痛も一度も起こらないという。ティアに「その時はなんて?」と聞かれると、「えっと…」と捻るように思い出しながら口を開いた。


「鍵を送るって。助けてくれって。あとは栄光を掴む者が捕らえようとしてるとかなんとか……」


 


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