Épelons chance | ナノ



57.Side-by-side




さほど大きくない剣の圧はラルゴよりも強く、その業はシンクよりも早く、狙いはリグレットよりも的確で、咄嗟に出る判断はディストよりも早い。アッシュの剣技よりも、アリエッタの譜術よりも何倍も大きいその力に、皆食らいつくように腕を振り上げる。神託の盾騎士団の総長、六神将を束ねる者というだけあり、その力の差は歴然と開いていた。

ルークの剣を真正面から受け取りそれを打ち払うと、同時に飛びかかるアニスを衝撃波で攻撃する。懐に切り込んだガイの一撃を難なくかわして、アニスをトクナガごとガイ目掛けて吹き飛ばした。即座に詠唱するヴァンへナタリアが弓を放つが目の前で断ち切られ、仲間の誰よりも早い譜術が後衛のジェイド、ティア、ミカルを襲う。
譜術壁で防御していても重たい攻撃は、徐々に体に疲労を蓄積させていく。


「お前のやっている事は無茶苦茶だ!」

再び走り込んだガイが剣を振り抜くが、今度は目の前で受け止められた。

「この星はユリアの預言の支配下にある。預言から解放された新しい世界を作らねば、人類は死滅するのだ!」
「ぐあっ!」

押し戻された衝撃でよろけた脇腹を蹴り飛ばされ、ガイの身体は宙を飛んだ。真後ろで弓を構えていたナタリアに激突すると、彼女も悲鳴を上げて倒れこむ。
ヴァンが足を振り上げた瞬間にティアのナイフがヴァンを掠めた。

「預言は絶対の未来ではないわ!」

肩を上下させながら彼女は叫ぶ。見た兄の頬には、薄く切れた傷から血が滲む。
トクナガの大きな握り拳が彼の真横から飛び、不意をついた。だが、それでも剣を盾に止められてダメージを与えられない。

「ルークやミカルが生まれちゃった以上、預言だって狂っちゃってんじゃん!!」
「違うな…お前たちは預言の本質を知らない。預言は詠まれずとも存在し、我々を定められた滅亡へと導くのだ!」

アニスの渾身の力を込めた拳は押し切られ、剣を構えてアニス目掛けてそれを振り切った。トクナガの腕は大きく切り落とされて、アニスが転げ落ちた。しかし、剣を振ったその小腹に屈みこんだのはミカル。トクナガの真裏、彼の死角から出た彼女に、一瞬だがヴァンの眉がピクリと動く。

「人はそこまで愚かではないわ!」

掌を広げて、ヴァンの腹を抉るように突きを繰り出す。

「!!」
「小賢しい!」

だが、剣を持たぬ片手にそれは止められて、そのまま手首を掴まれると放り投げられた。彼女の軽い身体は簡単に宙に浮き、ヴァンはそれ目掛けて剣を槍のように構えて放った。光の矛がミカルを襲う。「ミカル!」と四方から声が投げられたが、彼女の身体はそのまま地面へ墜落。ミカルの目の前では、譜術壁を張る青い友人の後ろ姿があった。
光る槍が打ち消されたのと同時に、剣のぶつかる音が響き渡る。

「人には滅亡を回避する、意思の力があるんだ!」
「レプリカ如きが……」
「そのレプリカが目前に立ちはだかってるってのは、どんな気分かな!」

ルークとガイの剣を左右で受けながらも彼は反撃を繰り出してくる。
数では圧倒的にこちらの方が有利なのに、あの男は足を一歩として後ろに引くことなく剣を構えている。さすが、というべきか。


「ミカル!」

息の上がるミカルを背に、ジェイドが譜陣を展開させて呼びかけた。
ハッとして立ち上がると、彼は振り向くことなく髪を揺らして言う。

「援護に回りなさい。ガイの傷を治して、もうほとんど力は残っていないのでしょう」
「あ…っ!」
「あなたは回復に専念してください。その方が何よりも有意です」

背を守りながら、彼の声は詠唱を紡ぎ始めた。ミカルは一瞬戸惑いはしたものの、自分が足を引っ張る訳にはいかない。
「はい!」と大きく頷くと、ジェイドから離れていく。ふ、と口元を笑ませると、彼は高く腕を振り上げ音素を開放した。部屋の中に雷が降り注ぐ。
 


[ 1/6 ]
[*prev] [next#]
-->
目次/TOP

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -