Épelons chance | ナノ



40.真実の花園


ダアトの連絡船。
仲間たちと引き剥がされたミカルは、一人神託の盾に囲まれて拘束されていた。目の前には真っ白な肌をした丸眼鏡の男と、大きな身体にゴツゴツした鎧を纏う大柄な男。六神将である彼らがモースと共に行動をしている?何故――











40.真実の花園










どこか機嫌の悪そうなラルゴに対して、悦を含んだ笑みを携えるディストは異様で仕方がなかった。
おそらく皆同じところに集められているのだろう。自分だけ別の場所に連れて来られた、ということは、少しでも逃げ出す機会をなくす為ということか。ヴァンの元へ行けば、殺されてしまうかもしれない。バチカルへ行けば、きっとルークが殺される。そしてナタリアは……。
冷たい床の上で丸くなって考えるミカルは、絶望的な状況に視線を落とすしかなかった。

「…ディスト。この船はどこへ向かっている」

重たい口を開いたラルゴは、静かに低い声で言った。

「おや?言ってませんでしたか?バチカルですよ」
「バチカルだと?」

眉をぴくりと動かすと、鋭い瞳が「どういうことだ」とディストへ突き刺さる。

「この娘…総長のところへ連れて行くのではないのか」
「戦争の再開ですよ。キムラスカを煽りに行くそうです」
「…何故俺がそれに同行せねばならぬのだ」

ピリ…と張り詰めるような空気は、やけに緊張感が漂っている。仲間内で話が噛み合っていないのか、ラルゴは執拗にディストを睨んでいた。そんなことは全く気にせずといった様子のディストは、「クク…」と不気味は笑いを浮かべては口角を釣り上げる。

「…くだらん」

そう吐き捨てると、ラルゴは巨体を上げて部屋を出て行く。どこへ行くのです、と問いかけたディストに対し「艦橋で待機する」とだけ告げて去っていった。彼はどうやらディストをあまり好ましく思ってはいないようだ。
二人になった船室に、どうにも嫌な空気が漂う。セントビナーで会った時から様子がおかしいディストも、今では神託の盾の一員として恐怖に変わりつつあった。「さて」と声と同時に動く白髪に、ミカルの身体もびくりと反応する。

「幾度か邪魔が入りましたが、こうしてあなたを我が手に入れられました」

椅子に座ったまま両手を広げ、そのまま天井を仰ぐ。

「…以前、わたしを調べる、と言っていたわよね。それはどういう意味?」
「そのままですよ。あなたはわたしの研究に協力することができるのです。光栄でしょう!」

向けられた笑顔は狂気に満ちているようにも見える。ミカルの背中がゾクリと震えた。
 


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