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06.途に宿りしは天しか知り得ぬ





「わたしの名前は―」









06.途に宿りしは天しか知り得ぬ










声に出せたのはファーストネームだけ。


ここは他国の干渉を受け付けないダアト。そして目の前にいるガイという男は、自身を観光者だと言った。

この世界には対立する二つの国が存在する。首都をバチカルにおくキムラスカランバルディア王国。そして、ミカルの国である、グランコクマを首都として設けるマルクト帝国。この二大国は、もう気が遠くなる程の刻を啀み合いに費やしていた。幾度となく繰り返された戦争、小さくもその民を削った小競り合い…国同士の間ではもちろんのこと、そういった歴史から理由を持たずに他国を憎む民衆は少なくはなかった。

もしガイがキムラスカの出身の者であるとすれば、無名ながらも爵位を持ったティアーニの名を知っていたとしたら大変なことになる可能性がある。悪い方向に全力で考えるとすれば、そこに待っているものは“死”ということ。
ミカルはキムラスカに対して、憎みや恨みといった感情は持っていないにしても、仮にも貴族。トラブルを巻き起こさない様注意を払いながら会話をすることは基本となっていた。




「ミカルか。いい名前だな」




まぶしく笑う彼を見ていると、まるで自分が彼を疑っているようですごく複雑な気分になった。




 


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