Épelons chance | ナノ



35.瞼を閉じてもオモイ空












35.瞼を閉じてもオモイ空










行き交う人は、殆どのものが作業着の様なツナギで身を纏っている。右を見ても左を見ても積まれた機械仕掛けの部品に、珍しく目を輝かせる男が一人。


「おいっ!見てみろルーク、譜業の山だぞ、この街!」


鼻息を荒くした様子で子供のようにはしゃぎ出すガイを見て、ルークは呆れた様子で目を逸した。
右へ走って「はぁ〜v」と言えば、すぐに左へ駆けて「おぉ〜!」と言う。街に入ってから、ずっとこの調子だ。ろくに興味もないルークは、腕をがっちり掴まれて引きずられている。ため息をつきながら「うぜぇなぁ」と文句を垂れているのに気がついてないのだろうか。

「何一人で盛り上がってんだよ…」
「お前なぁ、シェリダンと言えば、世界でも最高の技術を誇る譜業の街だぞ。これが落ち着いていられるかっての!」

口早に一言で言い切った彼は、言いながらも別の譜業へと目を輝かせる。

「ガイ、本当に譜業が好きなのね」

ダアトで会った時も、お茶をしながらやけに長々と熱く語っていたものだと思い出す。一人で右往左往するガイを見て、ミカルは面白そうに微笑んでいた。


「なあ、ミカルも見てくれよ!これなんかものすごく珍しくて…」

はいはい、と後ろからついていく。興奮しているからなのか、今は近づいてもあまり避けられることがない。
うんざりするルークを隣に、ミカルは珍しいガイの高揚する様子を楽しんでいた。



乾いた大地に、職人の街、シェリダン。
とても活気のある街は、あちこちで譜業の動く音がする。言うなれば、音機関の都。彼にとっては、まさに夢のような街だった。


 


[ 1/6 ]
[*prev] [next#]
-->
目次/TOP

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -