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05.金色に燃ゆる太陽












05.金色に燃ゆる太陽










ティアーニ家としての公務は、ほぼ無名とまで言えるその名には重過ぎる職務量だった。

環境や観光、公共事業から他の街との流通業まで、様々な分野でその身を削っている。しかし、そのほとんどがティアーニ家として背負った職務ではなかった。
決して暮らしていけない様な財産でもなかったが、友人であるネフリーが知事として勤しんでいるのを見るたび、少しづつその仕事を手伝いをし始めた。最初はただの手伝いを、しかしいつからか、その仕事の仕方に目を見張った事業の担当貴族がミカルに任せて職務の放棄をするようになった。仕事ではあくまでも、自分の名前を使い、ティアーニの名は伏せて。

いつの間にか無言で押し付けられるようになった雑務を毎日ひたすらこなしていた。
その事実を知っている使用人には、職務怠慢だ、爵位を剥奪すればいいのに、と怒る者もいる。

ミカルはそれでも毎日充実しているからいいの、と笑う。

彼女には職務を担っていてよかった、と心から喜ぶ瞬間があるからだ。
それは…



「それではダアトへ行ってきますね」



普段は公務やら何やらで旅行にも行けないミカルにとっては、正式な渡航を得られることは何よりの幸せだった。
そんなミカルを見てか、ネフリーは何も言えずにいた。彼女にとっては取り締まりたい気持ちもあるが、ミカル自身その怠慢な姿勢を否定するし、職務にも関わらず街の外へ出る際は一際嬉しそうに笑うのが象徴的だった。

既にピオニーへ言伝も飛ばしたが、彼は笑って「今はやりたいようにさせてやれ」とまるで自分の子供を見守るようなことを言っていた。


「…陛下もわかっているのなら、ティアーニ家として評価をして差し上げれば良いのに」

ポツリと呟いたネフリーは、幼き頃を写した写真を見る。
何も出来ない自分の立場を悔やむ姿があった。

 


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