Épelons chance | ナノ



32.表出する形、それぞれに



壊れたローテルロー橋へタルタロスを接岸し、徒歩でテオルの森を目指す。
青々と茂った大きな木が立ち並ぶ場所に関所が設置されていて、そちらへ近づくとマルクト兵がこちらへ「何物だ!」と激しい声調で一掃した。ジェイドが前へ出ると、その姿にギョッとした様子で身体が固まる。

「わたしはマルクト帝国軍第三師団師団長ジェイド・カーティス大佐だ」
「カーティス大佐!?大佐はアクゼリュス消滅に巻き込まれたと…」

門を守るマルクト兵たちは、一丸となって驚きを隠せないようだ。

「わたしの身の証はケテルブルクのオズボーン子爵が保証する。皇帝陛下への謁見を希望したい」
「大佐お一人でしたら、ここをお通しできますが…」

と言って、兵士がジェイドの後ろに控える仲間たちを見やる。すると、また驚いたように一人の少女に目を止めた。


「ひ…姫様…!?ミカル様ですか!?」


マルクト兵は全員その視線の先に目をやった。
少女は黒髪をなびかせてジェイドの隣まで歩み寄る。

「…やはり!今まで一体どちらへ!?皆心配しておりました…!」
「申し訳ございません。事情があり、カーティス大佐と行動を共にしておりました。今は取り急ぎ、陛下の元へ参りたいのですけれど…」
「では、大佐と姫様のみでしたらお通しすることはできます」

ミカルに向かって姿勢を正しきっかり言い終えると、後ろで聞いていたアニスが「えーっ!」と不満げな声を上げる。

「こちらはローレライ教団の導師イオンであらせられますよ!」
「通してくれたっていいだろ!」

ルークも必死なのだろう。アニスに続いて不満そうに訴える。しかし、兵士は「罠とも限らない」と目の前に控えるダアトの最高権力者を一蹴した。

ミカルとジェイドは門まで進むと、彼らに振り返って眉を下げる。

「みんなはここで待っていて。わたし達が陛下にお会いできれば、すぐに通行許可をいただけるわ」

ガイは小さく息を吐いて、「それまでここに置いてけぼりか」とルークへ視線を流した。
マルクト兵について歩き出すと、背中に小さく「…ちぇっ」と不満を含んだ声が聞こえた気がした。











32.表出する形、それぞれに










 


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