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27.定められぬ情感に存在する過去




27.定められぬ情感に存在する過去










「外殻の穴の方に見えた、あのでっかい光の樹がセフィロトなんだよね?あれで外殻大地を支えていたなんて信じらんないよ」


空中に浮かんでいるこの大地に、まだ得心のない一同は、アクゼリュスの穴から伸びるセフィロトツリーを見て胸を撫でる。

「えぇ。…でも、わたくしたちは、あれに押し上げられて魔界から脱出できたのですわ」

アニスの言葉を受けてナタリアが言うと、アニスはさらに「ホント、よく戻って来られたね」と安堵の息を漏らした。

「…理論は間違っていなかった。成功するに決まっている」

眉を寄せながらも、珍しく誇らしげな表情をしたアッシュは口元を緩めた。その様子を見ていたミカルの顔も、わずかにほころぶ。魔界からの脱出成功を喜ぼうとした時、その空気は思いもよらない人物によって遮断された。


「結果、上手くいっただけだろ。失敗したら、俺たちみんな死んでたかもしれない」


冷たい声が響き渡る。全員が驚きその声を発した人物を見ると、彼はいつもとは違う堅い表情で厳しい視線を向けていた。その様子に、ナタリアの眉が上がる。

「ガイ、あなたアッシュに対して刺がありませんこと?」
「…こいつは失礼」

謝罪の言葉にも含められた明らかな悪意を、誰もが感じ取る。ナタリアは誰よりも怪訝な顔を向ける。アッシュは今にもガイに何かを言いたげなナタリアを見ると、彼女の名を呼んで「放っておけ。俺は別に構わない」と静止した。ガイの普段とは違う様子と、アッシュの言葉の間で戸惑うナタリアは、アッシュを見て切なそうに彼の名をと呟く。

「それで?タルタロスをどこへつけるんだ?」

投げやり気味にガイが訊ねると、アッシュはそんな態度を気に止めることなく言葉を紡いだ。

「ヴァンが頻繁にベルケンドの第一音機関研究所へ行っている。そこで情報を収集する」
「ヴァン謡将が?」

ミカルが繰り返すと、アッシュは視線をくれて頷いた。

「俺はヴァンの目的を誤解していた。奴の本当の目的を知るためには奴の行動を洗う必要がある」
「わたしとイオン様はダアトに帰して欲しいんだけど」

今度はアニスの方を向いて「用が済めば帰してやる」と言ったアッシュは、どうやらタルタロスを動かす為に人手を求めているようだった。彼が神託の盾の部下を使ってしまえばヴァンに自身の行動が筒抜けになってしまうことを懸念し、このままミカルたちを連れて行くようだ。

「わたくしたちだって、ヴァンの目的を知っておく必要があると思いますわ」
「ナタリアの言う通りです」
「…イオン様がそう言うなら協力しますけどぉ」
「そうですね。ヴァン謡将の動向は気になります。わたしも行きます」
「わたしも知りたいことがありますからね。少しの間、アッシュに協力するつもりですよ」

口々に賛成を述べる中、ガイだけは無言で目を細めていた。

 


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