傷心12



―――――――side 一舞

 泣くこと以外の行動を忘れてしまったみたいに、あたしの体はずっと震え続けて。涙は溢れ続けていた。

 自分でもどうにも出来ない。

 透瑠くんの優しい言葉も、どうにか落ち着かせようと肩を抱いてくれる翔の手も。わかってるのに何も出来ない。

 気づいたらあたしは、翔の腕の中に強く抱きしめられていて…その広い胸の中に体も頭もしっかり包まれていた。

 暖かい大きな手が、何度もあたしの髪を撫でる。あたしが嗚咽を漏らすたび、あたしの体に回された腕の力が強くなる。







 …どのくらいの時間そうしていたのか、皮膚の感覚も、手足の先も、痺れてくるような感覚がし始めた。

 頭の中には、最後に見た涼ちゃんの顔と、あの瞬間感じた気持ち。今までの自分の心を自分が否定するようなあの感覚。


(あたし…この先どうすれば…)


 再び襲いかかってきた混乱が、さらに涙となって流れ落ちた。


一舞
「…っ…ぅ」


 息苦しさに漏れ出た声が、くぐもった響きを生んだ。

 自分の中の気持ちがわからない。起きてしまった事に後悔しているのか、傷ついているのか、それさえ曖昧で、泣いてはダメだと思いながらも止められない。

 ハッキリしているのは、あたしが涼ちゃんを傷つけたということ。大切にしてきたものが消えてしまったということ。

 あたし自身を支えていたものを、見失ってしまったということ。




(…!?)







 突然グイッと体を離されたかと思うと、顔を覆っていた手を退かされた。

 そしてほんの一瞬の間に、泣きすぎて開かない瞼の上から感じていた光が、遮られてしまった。




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