傷心4




??
「あらま。可愛いお客さんだね、こんばんわぁ」


 艶の足りない銀髪を揺らして、その人はニッコリと笑った。


一舞
「あ…こんばんは」


 あたしは、なんだかこの雰囲気に慣れなくて少し狼狽えていた。

 銀髪の人はというと、そんなあたしのリアクションを楽しんでいるような表情でニコニコと満面の笑みをうかべている。


銀髪の人
「俺に用事かな?」

一舞
「え?」

銀髪の人
「って、んなわけないよねぇ〜。ちょっと待ってね?」


 いきなりの冗談に対応しきれなかったあたしを置いて、銀髪の人は二階へ行ってしまった。


(びっくりした…しかも軽い…もしかしてあれが…いや、あの人が、純くんが言ってた、涼ちゃんのお兄さん?)


 声も顔付きも似てはいるんだけど、あの軽さは涼ちゃんには無い。てか、あんなノリには今まで対応したことなかったから、なんだか変に緊張してしまったというか、ある意味衝撃的…。




 玄関で立ち尽くし衝撃を受けた状態のまま顔を強ばらせていると、涼ちゃんが慌てた様子で二階から降りてきた。



「わっ!?ホントに一舞だ!」

一舞
「あ、こんばん」


「ちょっ大丈夫!?何もされてない!?」

一舞
「へ?」


 その慌てぶりはちょっと異常なんじゃないかと思うほどで、ちょっとしたサプライズのつもりがずいぶんと困らせているようにも見えた。

 意味がわからないあたしは涼ちゃんに肩を掴まれたまま絶句する。


 ふと…涼ちゃんの肩越しに、さっきの銀髪が顔を覗かせているのに気づいた。


一舞
「わっ!?」


 妙に驚いて声をあげてしまうと


銀髪の人
「ひどいなぁ〜。そんな驚くことないじゃない」

一舞
「あ…ごめ…」


「お前!やっぱ何かしたんだろ!」


 「ごめんなさい」と言い終わらないうちに、涼ちゃんは後ろに向きを変え、銀髪の人に怒鳴った。


一舞
「ちょっ!?涼ちゃん!違う違う!」


 あまりの剣幕にあわあわと仲裁に入るけど、涼ちゃんは今にも噛みつきそうな勢いだ。


銀髪の人
「何にもしてないよねぇ?せっかく可愛い子を前にして、この俺が素直に呼びに行ってあげたのに、その言い方はなくなぁい?」

一舞
「………」


 …なんかもう、声の発し方からしてあまりにも緩いから、なんだか脱力してしまう。

 涼ちゃんはあたしを自分の後ろに隠すような体勢のまま、無言で銀髪の人を睨みつけているし…どうすればいいのこれ?


 兄弟じゃないの?てか、仲悪いの?


 なんだかとっても…居心地悪いな…。





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