傷心3 (今何時だろう?) 日が沈んでそんなに経ってないからまだ大丈夫だよね…なんて考えながら携帯で時間を確認。 食事を終えてから、やっぱりというかなるほどというか、翔はあたしに洗い物をさせてくれなくて。仕方なくカウンターで翔の姿を眺めていた。 洗剤の泡だらけになった翔の手は、関節が少しゴツゴツと目立つけど長い指が凄く綺麗だ…。ちょっとくらいイケてない部分があっても良さそうなのに、どこもかしこも綺麗な造りでなんだか悔しかった。 (ずるいなぁ…) キッチンに立つ翔の姿がちょっと羨ましくて見つめていると、翔がクスッと笑った気がしてその顔に目線を移す。 翔 「…見すぎじゃね?」 一舞 「…え」 そしてまたクスッと笑って、穏やかな笑顔であたしを見た。 その不意打ちにドキリと跳ねた心臓を気とられないようにして、笑顔で「なに?」と目線で返す。 翔 「ここんとこ毎日、派手に転けてるみたいだけど……あんま無理しないでたまには涼を頼ってやれよ?」 一舞 「……………う…ん…」 お兄ちゃんが居たらこんな感じなんだろうな。…きっと翔にはあたしの怪我の理由がわかってるんだろう。 (…まぁ普通にバレるか) 優しく諭してくれるその笑顔が、ついこの前までは見られなかったものだとは信じられないほど板についている。 それ以降その話は終わった様子で、くだらない会話をしたり、無言の時を過ごしたり、いつも通り。 翔の家を出る時はさすがに、送るとか要らないとかで多少揉めたけど。あたしなら平気だし、一人で涼ちゃんの家に向かうという決着で話が纏まった。 それはそうと…実は初めてなんだ。涼ちゃんの家に行くの。 場所はわかってる。翔の家とは目と鼻の先ってくらいの近所だし。まぁ…藍原邸が馬鹿でかいからちょっと距離は感じるけどね。 角を曲がった先に見えてきた可愛い洋館風の一軒家。白い壁と綺麗に手入れされた庭。あまりの可愛らしさにため息が出た。 表札にはローマ字で《ASAGI》って書いてある。間違いなく涼ちゃんの家。 門の前で連絡入れようとポケットの携帯電話に手を伸ばしたけど…ビックリさせちゃうのもアリ?とか思ってやめた。 可愛く花が植えられた門をくぐり、淡いクリーム色の煉瓦が敷き詰められた道を通って玄関に辿り着く。 花の香りにウットリしながらチャイムを鳴らすと… ?? 『はぁ〜いぃ〜』 一舞 「?」 涼ちゃんの声なんだけど感じが違う。そう思った瞬間、玄関のドアが開いた。 中から顔を出したのは涼ちゃんの顔をした、艶の足りない銀髪だった…。 Novel☆top← 書斎← Home← |