傷心2



―夕方――――――――[藍原邸]―――


「…手、どうした?…つーかよく見たらアチコチ絆創膏だらけだけど」


 いつもより早く帰宅していた翔がリビングに降りてきて早々に、絆創膏が目立つあたしの手を見て聞いてきた。


一舞
「ん?…あー…派手に転けて、擦りむいただけ…だよ」


「………ふぅん…………鈍くせ」

一舞
「…」

(うわ…もっと上手い言い訳すれば良かった…)


 なんて自分の言い訳に少し後悔したけど、翔はそれ以上何も聞いて来ない…。いつも通り。そして、黙ってキッチンに居るあたしの側に来た。


一舞
「何?」


「いや…水仕事キツそうだなぁと思って」


 そう言って野菜の皮むきをし始める。


一舞
「………………」


「………………」


 意外と上手でビックリなんですが。


一舞
「翔ってさ…」


「ん?」

一舞
「もしかして料理できるでしょ」


「…あ、バレた?」

一舞
「うん。バレた」


「腹が満たされればいいって感じのモンしか作れねーけどな」

一舞
「充分じゃない?」


「そうか?じゃあこれからは、たまに俺が作ろうか」

一舞
「え?ダメだよなんかそれって…仲良すぎじゃない?」


「…そうかな」

一舞
「そうだよ。仲良すぎ」


「そうか…それはマズいな。涼に殺される」

一舞
「涼ちゃんはそんなバイオレンスな人じゃありません」


「バカだなお前は。涼はテディベアじゃねーんだぞ」



 翔が冗談ぽい雰囲気にしてくれるから、なんとなく空気が和む。

 必要以上に聞いてこないでいてくれるから翔といるのは楽だ。時間もあっという間。そして2人で用意をするととても効率が良く、食卓が途端に準備万端の状態になった。



「今日は店休みだから暇だな…」

一舞
「…そだね〜」


 2人だけの、いつもの食卓。とくに会話が弾むわけじゃないけど、翔と2人でする食事は例えば無言でも気にならない。

 …そういえばあのチューニングルームでの事件以来、涼ちゃんからの電話が減った。

 たぶん会える時間が増えたからだと思うけど、話してても様子が違うような気がするからちょっと気になる…。



「飯食ったあとどうする?」


 ぼーっと考え事をしながら食べていると翔が話しかけてきた。


一舞
「ん?…あ〜…どうしよ」


「帰る?」

一舞
「……ん。てか、涼ちゃんの家にでも行こうかなぁ…」



「……………そうか。まぁ頑張って」


 翔がニヤリと微笑む。


一舞
「………」


 まったく…無表情はどこに行ったんですか?




prev * next

Novel☆top←
書斎←
Home←


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -