傷心1



 バンド部に入部して数日。


       ガラッ…


香澄
「……誰もいない……今のうちにやっちゃお」

一舞
「…うん」

由紀
「わ、わたし、見張ってます!」


 今は休み時間、あたしは今保健室にいる。


 今まで無視してきたけど、そうもいかないくらい学校では嫌がらせがエスカレート。相手は女子だけじゃなく同じバンド部内の男子までが何かとやらかしてくれるようになっていた。


 例えば、げた箱から上履きが消えるとか、移動教室の間に体育ジャージが切り刻まれていたりとか、教科書やノートに散々落書きがされていたりとか。幼稚で悪質なイタズラは序の口。

 すれ違いざまにあからさまな中傷なんてのもかわいいもので、男子に至っては呼び出しに来ることがしょっちゅう。

 集団でイタズラしようとする奴らや暴力に訴えようとする奴ら、タイマン勝負挑んでくる奴とか、ハッキリ言って面倒くさい。

 女子の場合は涼ちゃん絡みの妬みだってわかるんだけど、男子の目的は、あの日あたしが蓮ちゃんを怒鳴ったことが原因らしいからわけがわからない。おかげで今日も生傷絶えないし。


香澄
「涼ちゃんに言ったほうがいいよ一舞…」


 傷の手当てをしてくれながら香澄はそう言うけど、それはなんかヤダ。涼ちゃんとの間にこんな面倒事持ち込みたくないもん。

 とにかく現状がどうあれ、由紀ちゃんを守りたくて入部したんだし、今はそっちが大事。


一舞
「こんなの大したこと無いよ。べつに命まで盗られるわけじゃないし」

香澄
「でも…」


由紀
「……」


一舞
「大丈夫。平気だよこんなの」


 心配そうな顔の2人に、あたしは笑顔を向けて言い切った。

 そうだよ。こんなの何でもないことだよ。

 あたしなら大丈夫。




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