予感8



―[チューニングルーム]――――――――side 蓮

『沢田さんを一舞だと思えば、少しはいい感じに事が進むんじゃね?お前にはそれが一番だと思うんだけど』


(何を言っているんだアイツは…思えるわけがないだろ)


 涼に言われた言葉に自分を納得させなきゃならないとは思うものの、どうしてもそんな風には考えられない。


由紀
「きゃっ!?」



     ガシャン!



由紀
「すっすみませんっ!」


「…」

 この女、実はワザとやっているんじゃないのか?そうじゃなきゃおかしい。このドジっぷりはあり得ない。

 無理…。このダメ女を一舞のように思うだなんて。



「おい貴様…足元に気をつけて歩け。もし傷一つでも付けてみろ、二度と此処へは来られないと思え」

由紀
「ごっごご、ごめんなさ・・・!!」


自分が思うより低い声が出たようだ。沢田の目から、途端に雫がこぼれ出す。



「泣くな。面倒だ」

由紀
「うぅっ…は、はい!」



 いくら一舞の友達とはいえ、こんなに鈍くさい奴は考えられない。今までアシになった奴らはちゃんと出来る奴らばかりだったのに…。


「さ、沢田さん…無理しないで…今日は…」



      ガタンッ!


由紀
「あ!」



「!」


「わっ!?ちょっ!」


由紀
「きゃっ!!」


      ガシャンッ!



「おいっ!!」

由紀
「すっ!すいません!!」


「っ!!」

(…涼のヤロー、こんな面倒なのまわしやがって!)



 俺が怒鳴るたび、他の部員たちまでがビクビクして必死に沢田をフォローしようとするが、沢田はその空気を読めないのか余計な動きばかり繰り返し、他の部員にまで迷惑をかけている。


(この状況…いったいどうしてくれる?)


 いつもは平穏に過ぎていくはずの時間が、今日は要らないストレスをかけられ乱されている…最悪だ。


 …確かに俺には、人を育てるって能力が足りないのかもしれないが…これではあんまりだ。


(!!)



「おい!沢田!」

由紀
「はっはいっ」


「そこにある機材には触るな!翔さんの機材は俺しか担当できないことになってる!」

由紀
「あ…ごめんなさい気をつけます」


「…お前はっ…とりあえず、見て覚えるまで、機材に触るな」

由紀
「…はい」


「…はぁ」


(俺、禿げるかもしれないな)




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