予感7 ―――――――side 涼 店では今夜もライブの準備中。時計の針は夜7時を指そうとしている。 蓮 「こっちはもういいぞ」 そう言って、蓮が翔くんのギターを運んできた。 涼 「あぁサンキュー」 翔くんの機材はちょっと手入れの注文が細かくて難しいから、蓮以外にはなかなか頼めない。いつも仕事が完璧で頼りになる人材だ…でも、蓮が居なくなった後はどうなるんだろう。最近そんな心配がよぎるようになってきた。 蓮 「…涼」 涼 「なに?」 驚いて振り向くと、持ち場に戻ったとばかり思っていた蓮が、困った顔でまだそこに居た。 蓮 「あの…沢田?とかいう女の事だが…」 涼 「…ん?どした?」 蓮 「別の担当に回せないか」 涼 「…」 …沢田さん、一舞の友達の由紀ちゃんって子。 蓮のアシスタントについてもらったんだけど、これは…使えない…って意味だよな。 涼 「そりゃ今まで楽器なんて自分の物以外管理したこと無いんだから。最初は仕方ないって」 蓮 「…あの女の行動は危なっかしくて困る。大切な楽器を破壊しかねないくらいなんだぞ」 涼 「そこを教育すんのが蓮だろうが」 蓮 「……俺が教育したら…自殺しそうだ」 涼 「怖っ!怖いこと言うなよ!」 蓮 「俺に優しさを求めるな」 涼 「だけどなぁ、それじゃ蓮も成長しねーだろ」 蓮 「なんだと?」 涼 「お前は人を育てる勉強したほうがいいって言ってんの。一舞に対しての優しさを他の子にも使えって」 蓮 「っ!?貴様!」 涼 「はいはい。隠してるのは知ってるけどバレバレだから。それよりいいか?沢田さんを一舞だと思えば、少しはいい感じに事が進むんじゃね?お前にはそれが一番だと思うんだけど」 蓮 「…何を言いだすのかと思えばそういう事か。馬鹿も休み休み言え。そんな風に思えたら最初からそうしている。それに一舞ならば、俺が教えなくても理解できるはずだ」 涼 「ま、何て言われても担当は変えないよ。頑張れセンパイ」 蓮 「チッ、融通が利かないな…わかったよ部長」 蓮はそう言って俺の肩を拳で軽く小突き、持ち場に戻って行った。 今まで蓮のアシには、バンド経験者や楽器の扱いに慣れた男子ばかりつけてきたから…蓮自体コレと言って後輩の教育なんてものに無縁だったんだよな…。 っていうかアイツの性格上女子をアシにするなんてのは問題外だったし、何も言わなくても立ち回れる奴じゃないと勤まらなかったからだ。 だけどそのおかげで他の担当はほとんどが素人から入る奴ばかりで現状いっぱいいっぱい…今回ばかりは蓮の性格に配慮してやることができないでいた。 だからこんな時、一舞がいてくれたらフォローに回ってもらうこともできるのにって…今ちょっとだけ思った。 (つーか由紀ちゃんを蓮の下につけたって知ったら、一舞に怒られるかもしんねーな…) Novel☆top← 書斎← Home← |