再会6




 照ちゃんに案内してもらう道すがら、さっきの疑問を確かめてみる。



一舞
「ねぇ照ちゃん?」


「んあ?」

一舞
「さっき、壁にたくさん貼り紙がしてあったじゃん?」


「あぁ」

一舞
「あの中にさ…涼ちゃんの写真パネルがあったんだけど」


「…あぁ、アレか」

一舞
「うん」



 あたしが何を言いたいのかを察してくれたらしいけど、彼の表情は少し変だ。



「アレなー…んー…どう説明したもんかなぁ…」



 そんなに説明しづらい事なのだろうか?照ちゃんは頭を掻きながら視線を宙にさまよわせ、考え込む仕草をする。そして更に困ったように眉を歪ませながら…



「まぁ…追々わかると思うんだけどよ、涼は今、校内で一番の有名人なんだわ」


 そう言った。



一舞
「…有名人?」


「そ。ま、単純に目立つ位置に居るだけなんだけどな。あの写真は選挙に使われたヤツでよ…涼の役割が終わるまでは、あんな感じで常に晒されてるってのが此処の常識だ」

一舞
「…役割?」


「あぁ。いっぺんに説明すっとややこしいから、追々な」

一舞
「…うん。わかった」



 ハッキリ言って、全然わからない。


(有名人で目立つ位置に居て、役割が終わるまでは晒し者?しかも選挙がどうとか言ってたよね?ってことは、生徒会とかそんな感じの話なのかな…?でも、それならそう言うか…)



 照ちゃんと並んで廊下を歩きながら、つい無口になる。

 単なる疑問が謎に変わって、余計に気になるからだ。


 だけど、今はこれ以上を聞ける感じではない。

 答えられる範囲でしか話していないのだろうから、話してくれるのを待つしかないのだろう。




「あ」

一舞
「え?」



 しばらく無言だったかと思えば突然に声を上げ、何かを思い出したように人差し指をあたしに向けている。




「一応、一個だけ忠告しとくわ」

一舞
「え…うん?」


(いったい何ですか?)



「さっきの場所から中庭が見えただろ?」

一舞
「ん?中庭?」


「気づかなかったか?突き当たりから中庭に出られるようになってんだが」

一舞
「そうなんだ?今度行ってみようかな」


「違う違う、俺はそれをやるなと言いたいんだよ」

一舞
「どうして?」


 何を言ってるんだろう…中庭と言えば、生徒の憩いの場じゃないのか。



「正確に言うとだ。中庭に出ると、その奥にデカい施設があるんだけどな?」

一舞
「…施設?」


「軽音科の練習棟とコンサートホールと、生徒会の事務室みたいなのが統合されてる施設だ」

一舞
「へぇ…!?凄いね?」


「コンサートホールと練習棟は何となく使うこともあるとは思うんだけどよ…約束事としてな?」

一舞
「うん」


「二階には上がるな」

一舞
「……?」


「特にお前は行かないほうがいい」


(え?なんで?)



「とにかく行くな。わかったか?」

一舞
「…う…うん、わかった」



 なんなんだろうか?この、照ちゃんらしくもない含んだ感じ…あたしが知ってるこの人は、もっとハッキリ言ってくれる人だったのに。






 …とにかく。わかったと言ってしまった以上は、このまま納得せざるを得ないわけで。



(なんだか変な感じだな…)





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