音色7



―PM4:57[街道]――――――――――side 蓮


 涼、照、香澄、洋、美樹。あと、ちんちくりんの豆女と地味女。その後ろを、表情を気取られないように歩く。




 心配だ。いったい何がどうなったら突然入院なんかするんだ?そんな疑問が頭の中をループする。


 涼の話によれば、一舞が家政婦の仕事で翔さんの部屋に居る時に、気がついたら意識を失っていて。

 目が覚めたかと思ったが様子がおかしく、全く動かなくなったとか…信じられないくらい高熱が出てたらしいとか…。

 結局よくわからない。

 たぶん本人に聞いたところで分かるわけもないだろうが、とにかく一舞の顔を見ないことには、俺のモヤモヤは消えそうにない。




「…!」


 俺に向けられた視線を感じて顔をあげると、洋がこっちに振り向きニヤニヤ笑っている。


(…バレたのか?……いや…あの馬鹿、面白がってるだけだな。…不謹慎なヤツめ)


 気取られるくらいなら自分からバラすだけだが、今はまだ悟られるわけにはいかない。

 それにしてもこんな時だというのにニヤニヤしているなんて腹立たしい。



(つーか転べ。転んで地べたに這いつくばっておけ)



 洋に向かって呪いめいた言葉を口パクで投げかける。

 馬鹿の洋がムッとして向き直ったところで、一舞が入院しているらしい病院にたどり着いた。



 病室は確か3階のはず。俺は思わず、先に歩いていた面子を追い越して、エレベーター目がけて走っていた。



「…?」


 誰よりも先に手の届くところまで近づいたエレベーターのボタン。しかし、それを押す手が何故か出遅れた。

 俺が手を伸ばすより数秒先に上へのボタンを押したのは子供みたいな小さな手。

 目線を下に移動させると…沢田…?とかいう、一舞にいつもくっついている地味女だ。




「………貴様…」

由紀
「はっ!すっすすすすみません!あ…焦ってし、しまってつつ…つい…」


「…いや…かまわない」


(それひしても…この華の無さは有り得ないな)



「おい蓮。ユッキーも。乗らないのか?」


「むっ!?」


 遥か目線の下。俺に気づいた途端、小刻みに震えだした地味女に気を取られているうちに、追い越した筈の奴らが扉の開いたエレベーターに先に乗り込んでいた。


由紀
「あ!のっ、乗ります!」


「……」


 やはりどうも調子がおかしい様だな。

 俺自身が。




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