再会5




 案内板を頼りに校内を散策。さすが軽音科というだけあって、奥へ進めば進むほどに派手な色が目に飛び込んでくる。

 手作りのバンドメンバー募集の貼り紙やライブの案内が、色とりどりに飾られて壁一面に貼られているのが、なんだか微笑ましい。

 たぶんあたしは、ピアノ科のクラシカルな内装よりも、軽音科のビビッドな感じが落ち着く。懐かしいような気分になって、色使いの鮮やかな貼り紙にそっと手を触れた。


一舞
「…楽しそう」


 思わず呟きが漏れた。


 あたしも2年くらい前は、バンド組んでいた。楽しくて、幸せな毎日だった。

 そんな思い出を噛みしめながら、貼り紙から貼り紙へと指でそっと辿っていく。

 けして綺麗とは言えない文字や、センスとかでは判断しきれない色合いが、あたしはやっぱり好きなんだろう。知らず知らずに頬が緩んでいく。




一舞
「……あ」



 指で辿って行き着いた、他とは違う素材感…写真だ。大きく引き伸ばしてある写真…。


 壁面にぴったりと寄り添うくらいに近づいていた体を離し、写真の全体を見ようと視線を動かす。



一舞
「…え……涼ちゃん?」



 大きく引き伸ばされた写真に写っているのは、入学式の日に最悪な再会を果たした元彼の姿。


一舞
「………てか、なんで?」


 あたしを睨み据えていたあの眼差しが、デカデカと壁に貼られているのは、普通に考えて妙だ。


(なんの意味があるんだろう?)



??
「何やってんだ?お前」

一舞
「えっ!?」



 急に声をかけられて、慌てて振り返る。



一舞
「あ! 照ちゃん!?」


「おー。元気か?」

一舞
「ふふっ、まぁそれなりに?」


「ひっさしぶりだなぁ、つーかお前デカくなってね?」

一舞
「かなり伸びたからねぇ…照ちゃんは相変わらず巨人だね」


「もう成長止まってるけどな」



 照ちゃんとは、一緒にバンドを組んでいた仲間だ。2つ年上だけど、昔から気さくな感じで話してくれるのは変わらない。ちなみに香澄の婚約者。



「お前のクラスこっちだったか?」

一舞
「ううん、迷って帰れなくなっちゃって。せっかくだから探検しようとしてたところ」


「ははっ、なんだ迷子か」

一舞
「そうなんだよ、照ちゃん案内してくれる?」


「あぁ、仕方ねーから連れて行ってやるよ。香澄が寂しがってるだろうしな」

一舞
「ありがとう!あたし香澄と友達で良かったわー」


「ホントになぁ」





 あの写真への不思議を抱いたままだったけど…照ちゃんと2人、軽音科の校舎を後にした。





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