弓弦8 翔に聞かれるまま、学校で起きた事を全部話し終えると、翔は無言でタバコを取り出した。 あたしはとにかく、自分の実状を話さなければならなかった羞恥心から、いたたまれない気持ちになっていたのだけど。そんなことを分かるはずもない翔は、こちらに目線を向けて… 翔 「吸う?」 と、ふざけ始める。 一舞 「要らないから!」 翔 「…………」 ピシャリと言い返されて、また変なびっくり顔をしている。そしてまた「プッ」と笑う。 翔 「お前おもしれぇよな」 何が面白いのか、あたしにはサッパリだ。 翔 「…大変ですねぇ、人気者の彼女ってのは」 そう言って煙りを弄ぶように丸く吐き出す横顔は実に楽しそう。 翔 「…ま、好きな時に好きなだけ居ていいよ」 (!) 一舞 「ホント!?」 翔 「お前嫌いじゃねーし」 一舞 「お前じゃなくて、一舞」 翔 「なるほど」 なんだか打ち解けてしまったのが不思議でならないけど、とりあえず助かった。 …それにしても《女嫌い》から嫌いじゃないと言われるのは、なんだか複雑な気分だな。 しばらくして翔が机に戻ると。あたしは、広い部屋の片隅に置かれたベッドにもたれて、その後ろ姿を眺めた。 広い背中とキラキラ揺れる髪が、なんだか羨ましく感じる。 あたしはそのうち強烈な眠気に襲われて… 意識を手放した…。 Novel☆top← 書斎← Home← |