弓弦4




 家に着いて、びしょ濡れの上履きを玄関に放り出し、二階の自分の部屋へ駆け上がる。

 シャワーを浴びる暇も無いので、サッと着替えを済ませ、制服を乾燥機に放り込むと、夕食の支度に取り掛かった。

 夕食の煮物を煮込みながら宿題を終わらせて、味が染み込む間に制服を部屋に干し。お風呂を用意して、明日の授業の用意も済ませた。


 髪がすっかり乾いた頃…



龍二
「ただいま〜」



 パパが帰宅。



一舞
「おかえりー」



 何事も無かった顔でパパを出迎える。



龍二
「お?いいニオイ〜」



 いつものようにおかずチェックをするパパ。



龍二
「今日は和食だね」

一舞
「そうだよ。撮影どうだった?」

龍二
「バッチリですよ〜。今回の龍二さんもカッコ良く撮れてるはず。これはまたモテちゃうかも?」

一舞
「あははっ、だといいねぇ。そういえば…ママは出張?」



 パパの冗談を受け流し、なんとなく聞いてみる。パパは寂しい時、返しにくい冗談を言うから。



龍二
「そ。寂しいよねぇ…一晩留守にするだけって言ってもさ…」



 肩を落として本当に寂しそうだ。



一舞
「一晩ならすぐだよ」

龍二
「でも寂しいよ〜」

一舞
「…いつまで経ってもラブラブなんだね」

龍二
「これでも新婚ですからねぇ」

一舞
「…新婚て…まぁいいや。じゃ、あたし隣に居るから。何かあったら呼んでねパパ」

龍二
「うっ、薄情者!」



 単純に1人になるのが寂しいのか、あたしの洋服を掴んで引き留めようとするパパを振り払い、隣の豪邸に夕食を持って行くため家を出た。















 夕食のタッパーを詰め込んだピクニック用のバッグを脇に抱え、大きな玄関扉をどうにか開く。

 階段を上がる手前で、リビングダイニングのソファーに座り、新聞を読んでいる涼ちゃんが見えた気がしたけど…なんとなく。

 さっきの事がバレてほしくなくて、気づかないフリをしてしまった。





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