弓弦3




 あたしに水を浴びせた3人は、しばらく目の前でハシャいでいたかと思えば、あたしの顔を見るなり逃げて行った。




(反撃し損ねた…残念。それにしても…水責めは初めてだから、マジびっくりしたな…)



 こんなことをされる原因は分かってる。あたしが、涼ちゃんと付き合ってるからだ。

 中学の頃も似たようなことがよくあった。あたしでは、涼ちゃんに不釣り合いだと、言いたいらしい。

 まぁ、今日まで無かったのが、そもそも不思議なんだから。そんなに驚くことじゃないよ。そんなことを思いながら、ようやく鏡の中の自分を見る。



(…ずぶ濡れ)



一舞
「どうやって帰ろうかな…」



 冷静になってみると、これはちょっと困ってしまう。

 とりあえず再び個室に戻って、髪と制服の水分を絞り…急いで教室のカバンを取りに走った。

 上履きもぐっしょりと水分を含んでいて、かなり重量が増している。

 いったい何の修行なんだろうか?みたいな。

 これじゃ明日使えないな…ってことで持ち帰り決定。


 紺ソも脱いで、裸足にローファー。まるで誰かみたい。


 まだ夏までは少し遠い季節。

 夕方の空気が、濡れた全身にひんやりと触れる。

 すれ違う人が驚いて振り返るのも気にしない。とにかく、風邪ひかないうちに帰らなきゃ。



 スカートが揺れるのも気にしないで…あたしの足は、家までの道を全速力で走り抜けた。





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