弓弦2




 放課後。

 担任から押し付けられた用事を済ませ、今は廊下を移動中。

 香澄と由紀ちゃんには先に帰ってもらったため、教室に戻っても1人だ。



 体操着の件はとりあえずまだ、誰にもバレていないはず。

 とりあえず持ち帰って処分して、家にあるもので代用しよう。

 こういう時、服装の規則が緩い学校って助かる。


(あとはこれからの保管方法だよね…何着も同じようにやられたら困るし)


 などと考えながら、立ち寄った女子トイレ。

 誰の気配もしない、夕日が差し込んだ空間はオレンジ色に染まっている。





 中学からそう。いつもこうやって何かしらの問題が起きるんだ。

 誰がどうとかじゃなく、これは仕方ないことなんだろうけど…。


 大きな鏡を覗き込み、何気なく前髪を整えながら、今日までのことを振り返る。


 上履きの件についても、体操着についても。女子と友好的になれない件についても…。

 困ると言えば困るし、気にしないでいることも出来なくもない。

 肉体的に危害を加えられない限り、反撃する気もないし。

 何より原因は…



一舞
「………」



 いやいや…こんな事グダグダ考えてる場合じゃないな。早く帰って仕事しなきゃ。

 そう思いついて、慌てて個室に入る。そして、スカートに手をかけた瞬間




バシャーッ!!





一舞
「!!!?」




 いきなり頭上から大量の水が降ってきて、体がフリーズしてしまった。

 何が起こったのか分からず、呆然と立ち尽くしていると…



クスクスッ



 …と、女子の含み笑いが聞こえた。





一舞
「っ!」




 一気に頭に血が上り、勢いよくドアを開けると、長いホースを持ったまま、2〜3人の女子が一瞬驚いた表情を見せた。…かと思うと、彼女達は大声で笑い始めた。

 あたしはただ、その3人を見ていた。

 カッとなった頭がどんどん冷えていく。


 うん。ちょっとだけ、水の勢いにビックリしたのが悔しいだけなんだけど…。

 うん。まぁこれはこれで…ムカつくし、怒ってもいいよね?



 なんて。脳内で、まったりとした思考を繰り広げていたら…大笑いしている彼女達のうちの一人があたしの顔を見て止まった。

 他の2人の腕を叩き、急いでこの場を離れようと促している様子。その目はあたしに目線を合わせたまま、少々強張って見える。



(…あたし今、どんな顔してるんだろうね?)


一舞
「……ふっ」


「ひっ!?」



(ひっ?って…あたしはまだ何もしていませんが?)





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