歌声6 たかだか中学生のバンドを、当時 高校生だったはずの人たちが好んで観てくれてたなんて考えてもみなかったけど、翔さんがあたしを知っていたのにも納得できた。 《Junior Sweet》はそんなに大きな箱じゃないけど、自分があのステージに立っていたっていう自覚があまりにも薄れていて、なんだか可笑しくなってしまった。 バンド部の人たちが忙しく動くステージに目をやりながら口元が緩んでしまう。 少しの間、純さんと学ちゃんと話していた。 あたしが引っ越してから今日までの店の様子。 あたし達が解散して、ステージに穴が空いて…最初は大変だったみたい。でも涼ちゃんが頑張って、バンド部がいろいろと動いたおかげで、今店はとてもいい状態にまで回復しているらしかった。 (涼ちゃん、すごく頑張ってたんだな…) 昔話を終えると、これからちょっと忙しいと言う2人と離れ、1人になる。 突っ立っているのも変に思えて、綾がPCとにらめっこしているカウンター席に近づいた。 一舞 「お疲れ、綾っち。さっきはありがとね」 綾 「かまへんかまへん」 一舞 「純さんか」 綾 「うははっ」 大掃除の御礼も兼ねて声をかけると、思った以上に砕けた返事が返ってきて、思わず突っ込んでしまった。 綾の視線はずっとPC画面に固定されたままだったけど。 (思わず突っ込んじゃったけど、忙しいんだろうな…) 一舞 「ねぇ綾?これから何が始まんの?」 綾 「ライブに決まってんじゃん。てか、今日は久々に翔さんが来てるからねぇ〜、盛り上がるわよん」 一舞 「…翔さん?」 綾 「…あ、一舞は知らないんだっけか?まぁ観てのお楽しみ〜」 綾はキーボードをカタカタ鳴らしながら、こちらに向くことなくそう答えた。そのPCの画面を横から覗くと、ライブスケジュールの調整をしているみたいだった。 色々なバンド名がたくさん並ぶ中、メンバーのスケジュール調整欄に翔さんの名前を発見。 一舞 「…学ちゃんのバンド?」 学ちゃんがバンドを持っているのは知っていたけど、ぶっちゃけ観たことが無かった。 (ていうか翔さんがヴォーカルなんだ…) 一舞 「……」 申し訳ないけど全っっっ然! イメージできない。 Novel☆top← 書斎← Home← |