歌声4





「痛ってぇなぁ...」



 そう言ってみぞおち辺りをさすりながら笑っているのは《学ちゃん》こと 五十嵐 学。

 この人はこの店のオーナーで、関係性としては、あたしの伯父ってことになる。


 とは言ってもまだまだ若い見た目が昔から誤解を招いていたっけ…。

 年はあたしより一回りも上だけど、引き締まってスレンダーな体型と健康的な褐色の肌に、襟足の長い髪型。更には 黒髪にオレンジのメッシュを入れてたりして相変わらずの派手さだ。

 ハッキリ言って年齢不詳。

 既婚者で子供もいます…なんてきっと誰も思わないかも。



 と…まぁそれはさて置き。

 懐かしい語らいをしようとする学ちゃんに気になっていることを聞いてみることにした。


一舞
「翔さんてここの常連さんなの?」


「は?何?おまえ翔と知り合いなの?」


 驚いている表情が『有り得ない』って顔に見える。


一舞
「てかあたし、翔さんに連れて来られたんだもん」


 って、簡単にいきさつを話そうと思ったのに…



「おまっ翔の女になったんか!?」

一舞
「……」


 何かわけわかんないこと言ってるし。



「アイツはダメだぞ!絶対にやめとけっ!な!?」

一舞
「誰があんな人…てか学ちゃん話飛びすぎ」


 急に《伯父さん》になる学ちゃんに、パパとママの勝手な判断で翔さんの家政婦をすることになったこと。そのせいで、有無を言わさず店に連れて来られたことを説明した。そして、あまりにも自然に店内に入って行く翔さんと、見知らぬもみあげ男に感じた違和感を、ちょっと面倒になりながら聞いてみた。


 一通り話終えると、学ちゃんは少しホッとした様子であたしの最初の質問にようやく答えてくれた。




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