歌声3




 《CLUB Junior Sweet》


 此処は、中学時代のあたしや涼ちゃんが毎日通ったライブハウス。

 勿論お酒も扱うような店だから、当時は学校から色々言われたし問題にもなっていたらしい。

 ただ、比較的大きな問題にならなかったのは、この店の経営者があたしの親戚だったから。



(懐かしいな…)



 店内に入って、キョロキョロと辺りを見回してみると、全然変わってなくてホッとした。

 ここは大切な思い出の場所だから。…でも、気のせいかな。それとも背が伸びたせいなのか。

 ステージも、客席も、カウンターも。見覚えのある全てが少し小さく感じる。



一舞
「………?」



 懐かしさに目を細めながら、ふと気づいた。

 どの場所にも、さっきまで会ってた顔がある。

 ステージでは照ちゃんと蓮ちゃんが、同じ制服を着た下級生らしき男の子たちに、楽器のセッティングを指示していて。

 ステージの下からは涼ちゃんが、ステージ上に向かって何か指示している。

 客席では、同じく制服を着た女子達が、衣装や機材を抱えて右往左往していて…彼女たちには洋ちゃんが指示を出しているようだ。

 カウンターでは綾がPCの傍らで難しい顔をしているし。PAブースでは美樹ちゃんが、珍しく大きな声で涼ちゃんに向かって注文をつけている様子…。




(…ここがバンド部の拠点?)



 理解した時には、店内が違う場所に見え始めていた。そして、その光景に目を奪われていたあたしは…今度は聞きなれない声に耳を奪われる。



??
「おぉ!翔やないかぁ!どないしたん珍しいなぁ〜あはは!」



 驚いて振り返った先には、モップを片手に翔さんの肩をバッシバシ叩きながら大笑いする、もみあげ男がいた。




一舞
「…え…誰?」



 久しぶりに見る見知らぬ顔に、逆にビックリしていると…



??
「かぁずまじゃねーかぁー!!」



 今度は凄く懐かしい声が、背後から大音量で響いた。



(!!)



一舞
「ちょっ!?」




   ドスッ!!





 振り返る間も無く抱きつかれ、反射的に肘が出てしまった。





 「ぐおっ!?」という呻き声と共に崩れ落ちたのは…一際懐かしい派手髪。



 《学ちゃん》だった…。






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