仲間5






「心配か?」


 思っても見なかった現象に驚いて黙っているあたしに、蓮ちゃんが言った。


一舞
「うん…てか、いつもの美樹ちゃんじゃないみたいだから…」


 正直にそう答えると蓮ちゃんは、視線をフッと外へ向けて静かにこう言った。



「大丈夫だ…美樹は俺と一緒にいたく無いだけだから」

一舞
「?…蓮ちゃんと居たく無いって…なんで?」


「まぁ…昔…色々あったからな」

一舞
「…?」


(…?…色々?)


 彼の言っている意味がわからなくてその顔を見上げると、いつも冷静さを保っている筈の蓮ちゃんの表情が少し、寂しさを含んでいるように見えた。

 事情はよくわからないけれど、美樹ちゃんが帰ってしまった理由はわかったし、きっとこれ以上は聞かないほうがいいのかもしれない。



「とりあえず話長くね?」

一舞
「わ!?」


 空気が沈んでしまったあたしと蓮ちゃんの間に、涼ちゃんの顔が割って入ってきたものだから驚いて飛び上がった。




「蓮は手ぇ早いかんな。気をつけねぇと」


「ふん…貴様には言われる筋合いは無いな」


 そんな会話に、香澄がぷっと吹き出した。



「一舞ぁ?コレどこに片付けたらいいん?」

一舞
「あ、ちょっと待って今行く〜」


 綾に呼ばれてあたしはキッチンへ。それを皮切りに片付け再開。

 いつの間にか洋ちゃんも戻ってきて、また騒がしくなる大豪邸。




「おい、そこのチビ」


 そう言って蓮ちゃんが指差したのは…


由紀
「はっはい!?」


 由紀ちゃんだ。



「貴様はコレを運べ」

由紀
「はははい!」


 いつも以上に焦った口調で応える由紀ちゃんだけど…蓮ちゃんが指定したのは、細かい消耗品を箱買いした大きめのダンボール。


 蓮ちゃんは昔から女の子に優しいタイプじゃなかったけど、あれじゃ由紀ちゃんが可哀想だ。

 手を貸したいのに助けに行けないあたしがオタオタしていると…



「蓮!お前は鬼か!」


 そう言って、戻ったばかりの洋ちゃんが由紀ちゃんに駆け寄る。



「ごめんね〜重いよなコレ。俺が持つから細かいのお願い」

由紀
「あっ…ありがとう…ございます」



(おぉ!さすが洋ちゃん!優しいじゃないですか!)







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