再会3




 ひたひたひた…と、妙な足音が響く。先程までのざわめきは、いつの間にか小さくなって、生徒の大半が自分たちのクラスでHRに備えはじめたのだとわかる。

 上履きが無いために、足の裏に伝わるヒンヤリとした感触。これもなんだか懐かしく感じるあたり、あたしの脳内は随分と平和だ。



 あたしが近づいても、その場を動かずにいる先輩女子2人。

 すぐ側まで近寄り、その顔を覗き込むと、今にも悲鳴をあげそうな変な顔をする。


 その態度はいったい何なのよ?


 そう言いたい。





一舞
「久しぶりだね先輩。元気だった?」


「!!」


「!?」



 とびきりの笑顔で再会の挨拶をしてるのに、2人は更に変顔をする。



一舞
「ねぇ先輩?あたし、こういう状況ってあまりにも久しぶりで驚いちゃったよ。こういうのもサプライズって言うのかな」



 あんまり変顔ばっかりされるから、ちょっとだけ意地悪な気持ちが湧いてくる。


 目の前で視線を交わし合い、どう答えたものか思案している様子がまた、あたしを掻き立てるわけで…。



一舞
「てか、知ってる?人の物を壊したり汚したりするのって、とっても悪いことなんだよ?」



 まるで子供を諭すように、とぼけた顔にとぼけた口調で言い終えると、2人の顔が徐々に赤くなっていく。


「わ…私達じゃないわよ!」


一舞
「えー?じゃあ誰がやったの?」

「しっ知らないわ!」



 明らかに焦っている顔で否定しても、《私達がやりました》と白状しているようにしか見えないのに。



一舞
「ふーん…じゃあセンパ〜イ。犯人探してくれない?」


「そんなの自分で探しなよ!つーか年下のクセにタメ語とか超感じ悪いから!」


一舞
「……」


「そ、そうよ!年下のクセに生意気なのよ!」


(なんだコレ?)

 まるであたしが怯んだとでも思っているのか、2人は得意満面になって《年下》を強調している。


 この主張はどうかと思うよ。

 そもそもあたしよりも年上だと言うのなら、もっと然るべき態度で居てほしいものだ。

 後輩が困っている姿を半笑いで眺めてるなんて、悪趣味だし最低だ。それなのに、この得意気な顔はなんなんだろう。



一舞
「ぷっ」


「なっ!?なに笑ってるのよ!」

一舞
「や…べつに」

「つか、あたし達はアンタの先輩なの!態度改めろよ!」



香澄
「ばっかみたい」



「なによ!?」

香澄
「幼稚ですね。センパイ」

「なんですって!?」


香澄
「あ、そっか。年上だってところを強調しないと、どっちにしろ勝てないから仕方ないんだね」



「〜〜〜っ!」

「いい加減にしろよ!ばっかじゃないの!?」


 香澄のトドメの言葉に、2人は真っ赤な顔をして走り去った。






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