仲間1



一舞
「う〜ん…もうちょっと早くから始めても良かったかも?」


 片付け半ばの室内を見渡して、心の声が漏れた。



 今日は日曜日。本当なら、彼氏とゆっくりデートでもするのが本来の高校生なんだろうけど…あたしの場合は、そうもいかない。

 少し前から家政婦をすることになったお隣の大豪邸。人が住んでいるにもかかわらず、まるで廃墟のようになっていた家。

 毎日飛んで帰って掃除しても、それはそれは広くて1人では全然終わらないものだから、仲間に協力してもらいつつ今日は大掃除をしていたりする。



「あ〜も〜!こんなのやってらんねーわ!つか何で翔くんの家を俺が掃除しなきゃなんねーの?」


 手に持っていた雑巾を放り投げながら、大きな声で愚痴を吐き出すあたしの彼氏。


一舞
「…う?」


(さっきから機嫌悪いと思ったら…やっぱり嫌だったんだ…)


美樹
「文句言わないの!照と香澄は真面目にやってるじゃない!」


「香澄は実家なんだから普通だろ。照は香澄のためならなんでもやるしな」


「まぁな」

香澄
「じゃあ涼ちゃんも、一舞のためだと思って頑張りなよ」


「なにっ…!」

美樹
「だいたい涼は小さい頃から此処に出入りしてるんだから、こういう時くらい何かしなきゃ」


「…まぁ…それはともかく、一舞のためだと思えばなんとか…な」

一舞
「ありがと涼ちゃん」


「…ん」


 そんなこんな…文句言いつつも手伝ってくれる彼氏に感謝しつつ、1人ではあんなに苦戦していた掃除がどんどん片付いていった。


















 午後6時。


 リビングやキッチンなどの必要最低限な場所はピカピカに片付いて、残っているのはたぶん誰も使わないであろう場所ばかり。

 主の部屋なんてこの際いつでも掃除できるから、ってことで。残りは香澄からハウスクリーニングを頼んでくれることになった。


 用意しておいたオニギリをみんなで食べながら一休みしていると、ピアノのレッスンを終えた由紀ちゃんが駆けつけてくれた。


由紀
「おっ…遅くなってごめんなさい!…っおわ…っちゃいました?」

一舞
「ううん。由紀ちゃんの分も残しといた」

由紀
「あはっ」

一舞
「ありがとう。今は休憩中だから、由紀ちゃんも一緒に食べよ」

由紀
「はい」

香澄
「これはアタシが握ったやつね〜。はいユッキー」

由紀
「ありがとうございます」


 香澄からオニギリを手渡され、ニッコリと安心したような笑顔を見せる由紀ちゃん。

 由紀ちゃんが居るとなんだか空気が和むなぁ…なんて、目の前の笑顔に癒されていたのだけど。


一舞
「………」


 どうも背中に視線を感じるんですけど…。



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