感情2





一舞
「えっ!えっ!?ちょっ!うひゃっ!!」


「何もしねーし…黙れ」

一舞
「えぇ〜…?」



 ようやく向き合えたと思ったら…何故か一瞬の内に、涼ちゃんの腕の中に収まってしまっていた。

 何もしねーとか言っても、これは充分事件なわけで…。




「ごめん…」

一舞
「!……え?」


「この前の…アレ……びっくりしたよな…」

一舞
「………え…っと…」


(この前のアレっていうのは、やっぱりアレだよね…)


一舞
「……だ…大丈夫」


「………そっか」

一舞
「………うん」


「……」

一舞
「……」


(あぁ…なんか…胸がいっぱいな感じ…)



 ぴったりと密着している体を伝って、鼓動が伝わってくる。

 それにしてもこれって、どう理解したらいいんだろうか。


(ねぇ…いつまでこのまま?表情がわからないと、不安だよ…)


          キーンコーンカーンコーーン……


 迷うあたしを置き去りにするみたいに、お昼休みの終りを告げるチャイムが鳴り響く。


(授業サボったらまた、先生から嫌味言われるかも…)


 どうしたものか決められず、どうでもいいことを考え始める。




「………やっぱ……だな」

一舞
「…へ?」




 不意に涼ちゃんが何か呟いたけど、なんだか聞き取れずに、戸惑いながらアタフタしていると、涼ちゃんの腕が、あたしから離れていく…。





「…俺の…誤解だったんだよな?」

一舞
「…え……うん」


「そっか…俺がバカなだけだったんだな」

一舞
「う…で、でも!あたしの言い方に問題があったんだから仕方ないよ……うん……ごめん」


「………じゃあさ」

一舞
「うん?」


「これって、相殺できんじゃね?」

一舞
「……え?」


「俺も、謝んなきゃなんねーことしたし…って意味で」

一舞
「…………」


「だから、別れたとかも無しってことで」

一舞
「…………」


「嫌ならいいけど…」

一舞
「い!?嫌とかじゃないよ!」


「…ならいいじゃん」

一舞
「う…ん」



 驚いた。

 こんなアッサリでいいのかな…って、ちょっと心配になるくらい、いとも簡単に丸く収まってしまった…。




「……」

一舞
「……!」


 どうリアクションしたらいいのか迷いながら、涼ちゃんの顔を見つめていると…彼の手が、あたしの手に触れた。



 懐かしい、華奢で大きな手…今はもう、怖いなんて感じない。






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