元彼4



 美樹にはいつだったかそれなりに、一舞との経緯を話したことがある。

 だけど…名前まで話したっけ?



 俺が困惑しているのを知ってか知らずか、目の前で美樹は、携帯のストラップを指先で弄びながら何かを思案している様子だ。


美樹
「そっかぁ…今日からかぁ…」



(だから何が?何でアイツのこと知ってる感じなの?)



「お前…一舞と会ったの?」

美樹
「うん。もう友達だよ」



(嬉しそうだなぁ…)



 俺と知り合ってから、女友達なんて出来なかった美樹。本気で嬉しいって顔で笑った。



美樹
「…ねえ…涼は、一舞を憎んでる?」


「……」



 そりゃあ、別れた直後は憎らしいと思ってた。

 別れを切り出したのは俺だけど、そんなに簡単に次のことなんて考えられるのかって、幻滅もした。だからあの再会の日も、何も無かったみたいに声をかけてきた一舞にムカついた…。


 バンド部の部室で一舞にしたことは…自分でも理由が見つからない。

 傷つけたかったのかもしれないし、単純に…まだ気持ちがあったからなのかもしれない。



(…まだ?……そうなのか俺…?)





「……」

美樹
「……」


「…………」

美樹
「……」












       ピシッ!



「痛った!!?」


美樹
「……」


「痛ってーな!なんだよいきなり!」


美樹
「バカみたいな顔してるからよ」


「うわ…バカってお前…」

美樹
「わからないなら話してみたらいいじゃない。ウジウジ考えるの、涼の悪い癖だよ」


「……」


(確かにな…)



 バカは余計だけど、その言葉で、目が覚めた気分になった…。





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