歪曲12



―――――――――――side 透瑠

 パリ市内のとあるホテル。窓の外は美しい夜景。

 公演後のレセプションから部屋へ戻り、荷物を放り出した勢いのままベッドの上に転がった。


(日本は今、午後七時くらいか…)


 ジャケットの内ポケットから携帯電話を取り出し、掛け慣れない番号を電話帳から検索。

 発信ボタンを押せば、途端に身体が重く感じた。






??
『Bonjour(もしもし)』


 数回のコールの後、聞こえた声。

 相手側にも俺の番号は登録されているようだ。



透瑠
「Bon soir, il peut parler maintenant?(こんばんは、今話せる?)」

??
『Oui, c'est OK. Est-ce qu'il a été utilisé à l'eau de Paris?(ええ、大丈夫よ。パリの水には慣れた?)』

透瑠
「Il a été utilisé. Mais il part ici demain.(慣れたよ。でも明日にはここを発つけどね。)」

??
『Oh, ayant téléphoné à, même quand [tel] occupé est un doux à.(あら、そんな忙しい時にまで電話してくださったなんて、優しいのね)』

透瑠
「Il est-ce qu'une promesse est qui le contact du téléphone est emporté une fois dans un jours et est..?…Il aimerait complètement la différence du temps 7 heures.(一日に一度、電話連絡をする約束でしょ?…まったく、時差7時間は気を使うよ)」

??
『Oh, appel.(あら、ごめんなさいね)ふふふっ、Mais probablement, la vue de la nuit de Paris sera belle?(でも、パリの夜景は綺麗でしょう?)』

透瑠
「Oh, c'est beau. C'est regrettable qu'il ne puisse pas apporter à maison.…Est-ce que vous pouvez parler bientôt en japonais?(ああ、綺麗だね。持って帰れないのが残念だよ。…そろそろ日本語で話してもいい?)」

??
『そうね。彼は打ち合わせに出ているし、透瑠さんが平気なら私は大丈夫よ』

透瑠
「ありがとう。あまり使い慣れない言葉は疲れるね」

??
『そうかしら?結構様になってましてよ。ふふ』

透瑠
「パリジェンヌを口説けそうかい?」

??
『それはどうかしら。ふふふふ…あ、そういえば、公演の成功おめでとうございます』

透瑠
「ありがとう」

??
『お父様も喜んでらしたわ』

透瑠
「君の父上に喜ばれてもね」

??
『私たちが安泰だと思ってらっしゃるんだもの、仕方ないわよ』

透瑠
「今だけは夢を見させてやるって事かい?」

??
『そうね。親不孝はいけませんもの』

透瑠
「なるほど…で、君の方は順調?」

??
『そうね…あまり信用されていないようだけど、順調なんじゃないかしら』

透瑠
「ふぅん…やっぱり」

??
『あの方、私に対してエスコート以外は触れもしないんですのよ』

透瑠
「それは仕方がないよ。今の本命は違うんだから」

??
『まあ失礼ね。私だってそれなりの覚悟をしていましたのに』

透瑠
「残念だったね。俺も彼も誘惑には強いタイプなんだよ」

??
『警戒心の問題かしら。それだけ他人を信頼できない証拠ですわ』

透瑠
「人間ほど恐ろしい生き物は居ないからね」

??
『怖がりなのね』

透瑠
「何とでも言ってくれて構わないよ」

??
『それにしても…何故、名前で呼んでくださらないのかしら…あの方も、貴方も』

透瑠
「きっと…名前で呼ぶのは失礼だと思うからじゃないかな。少なくとも俺はそうだけど」

??
『呼ばない方が失礼ですわ。いくら裏切りを犯した者だとしても冷た過ぎますわね』

透瑠
「裏切られたなんて思っていないよ。悪いのは俺なんだから」

??
『まあ…』

透瑠
「どんな場合でも、いつでも悪いのは男の方だ」

??
『…以前にも仰っていましたわね。まるで、ご自分が男性である事を強く主張されているように聞こえますわ』

透瑠
「主張して何がいけないの?」

??
『いいえ。いけない事なんて…ごめんなさい。口が過ぎましたわ…』

透瑠
「気にしないで構わないよ。とにかく今の状況を聞けて良かった。君の目的が恙無く全うできることを祈っているよ」

??
『ええ…貴方も。上手くいくと宜しいですわね』




 (コンコン・・・)


??
『あら、彼が戻られたみたいですわ』

透瑠
「そう。じゃあまた明日」

??
『ええ。Bonne nuit(おやすみなさい)』

透瑠
「Bonne nuit(おやすみ)」



 通話の途切れた携帯電話を傍らに放り投げ、着の身着のままブランケットに包まった。


 明日にはパリを発つ。

 日本に着いたらどういう動きをしようか。

 そろそろ事がややこしくなっている頃だろうから、慎重にいかないとな…。




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