歪曲10 ――――――――――――side 美樹 容疑者として特定されてしまった後輩。めぐみ。 彼女がPAに配属されてから、一緒にライヴのプランニングを練っていた思い出が次から次に蘇る。 いい子なんだよ。見た目に反してとっても真面目だし、凄く女の子だし。優しいから、香澄の面倒もよく見てくれて… 美樹 「……今日は弥生さんも顔出してくれるって、綾が言ってたよ」 涼 「…そうか」 美樹 「…」 さっき、慎一の口からめぐみの名前が出た瞬間の、涼の顔がとても印象的だった。 もし彼女が一舞への怨みを持っていたとして、もし写真を撮った犯人だとして、その事だけで涼と繋がっていたかどうかという問題になるかはわからないけれど… 私が知っている《元お相手》の中には含まれていなかった。だけど涼は彼女の名前に反応した。 ということはやっぱり…? 涼 「…あれだろ?めぐの事聞きたいんだろ?」 美樹 「……」 涼 「いいよ。何でも懺悔すっから。聞いて」 美樹 「……めぐって呼んでたんだ?」 涼 「ん…あぁ…まぁ」 美樹 「めぐみと…そういう…?」 涼 「……うん」 美樹 「いつ?」 涼 「…アイツが入ったくらいん時」 美樹 「…」 涼 「ちょっとの間な…付き合ってたみたいな感じだったんだよ」 美樹 「……全然知らなかった」 涼 「同じ部内だったし、周りにバレっと色々面倒だと思ってたから…」 美樹 「え、でも、だって、その時だって相手は他にも居たよね?」 涼 「……」 美樹 「好きになって付き合ったわけじゃないの?」 涼 「すんげー押しがつよくてさアイツ…なんつーの?俺も…盛ってた頃だったし…断りきれなかったっつーか…」 美樹 「…」 涼 「それでも、二週間くらいだよ、もったのなんて」 美樹 「…」 涼 「それからは他の女と同じ感じでしか…」 美樹 「……で?」 涼 「…」 美樹 「一舞が来て、そこで切ったんだ」 涼 「……うん」 美樹 「…ふうん」 涼 「…」 美樹 「…」 涼 「でも…一舞とくっついて、別れたろ?あの後も何度か…連絡来たりしてたんだよ」 美樹 「…」 涼 「戻りたいって…」 美樹 「…」 涼 「さすがに俺も、気持ち的にそんなん無理だったしすぐ断ったけどさ…もしかしてそれもまずかったかな」 美樹 「ううん。そこはハッキリしてたなら、大丈夫だと思うけど…」 涼 「…」 美樹 「…たしか、同じ中学だったんだよね?」 涼 「それは、俺もさっき知ったんだよ。中学ん時なんてあんなタイプ見た事なかったし」 美樹 「…」 少しだけ、めぐみの気持ちが見えた気がした。 入学してすぐに涼を口説き落とした経緯から見ても、同じ中学だったという事実から見ても。 彼女の想いはとても強かったと感じるよ…涼。 美樹 「涼の目に留まるために、変身したのかもね…」 涼 「…高校デビューってこと?」 美樹 「それだけじゃないでしょ」 涼 「…」 美樹 「それだけ強い想いを抱えたままだったって事じゃない」 涼 「…じゃあ」 美樹 「…めぐみかもしれないっていう可能性は強くなったよ」 涼 「…」 どうやって?とか、どうして?とか、そんな事は本人に聞かなきゃわからない事だけど。信じたくない可能性に信憑性が増していく。 涼 「…どうすればいいかな」 美樹 「涼に出来る事なんて無いわよ。あんたが動いたら火に油」 涼 「でもじゃあ、どうやって…」 美樹 「蓮に考えてもらう」 涼 「え」 こういう時こそ、冷静に判断と実行をしてくれる人が必要だ。 涼ではだめ。絶対。 Novel☆top← 書斎← Home← |