歪曲9




「あーまじかったり…」

香澄
「涼ちゃんに美樹ちゃん取られちゃったもんねふひゃっ」


「誤解を招く言い方すんなっつの。美樹ちゃんがどうしても涼と二人で話したいっつーからでしょうよ。俺って理解あるぅ〜」


「だな。よく我慢したわお前」


「でっしょー?さっすが照くん、わかってるわぁ〜」

一舞
「っていうか、美樹ちゃんが話したかった事って、やっぱりあの事…だよね」

香澄
「そうなんじゃない?美樹ちゃんも知らなかった相手が居たってのもビックリだけどー」


 部活のため店へ向かうあたし達四人。

 いつもは美樹ちゃんと二人で移動する筈の洋ちゃんが、面白くないといった表情で隣を歩いている。


 先ほど部室で名指しされた容疑者・めぐちゃん。

 その件について、美樹ちゃんから涼ちゃんへ、何かしら問いただしたい事があるようだ。

 あたしにしてみればまったくのノーマークだった相手の話。

 嫌な事をされた記憶も無いし、言ってしまえば友達だとさえ思っていたくらいなのだから、内心は驚くなんてもんじゃない。

 もし慎ちゃんの読みが当たってしまったら、それはそれでどうしていいやら謎なままだ。

 近い仲間だと思っていたからこそ間違いであってほしいと思う。今はそれだけしか…




「めぐみなぁ…あいつ同じ中学だったなんて知ってたか?」


「知んないよ。てかもしかして今とビジュアル違ってたとかいうオチなんじゃねぇの?それならわかんなくても当然っしょ」

香澄
「あるかもねー…そうだよ。めぐっちみたいな派手な先輩いたらすんごい目立つもんね」


「へそ出してっし」


「あのへそは良いな」


「な。良いよなマジ」

香澄
「ちょっと」


「香澄もへそ出せばいんじゃね?照くんも嫌いじゃないみたいだし」

香澄
「やだ!」


「香澄のへそは俺だけのモンだからだめ」


「出た惚気」

一舞
「安定の照ちゃん。ふふ。そういえばセクシーだもんねめぐちゃん」


「わかる?」

一舞
「うん」


「じゃ、一舞も出す?」

一舞
「寒いからやだ」


「色気ねぇなおい」


「まあいいんじゃねぇの?ぷひゃひゃっ、一舞がへそなんかだしちゃったりしちゃったら、涼と蓮が毎日挙動不審になっちゃう」

香澄
「わっかりやすいもんねーあの二人」

一舞
「え?でも蓮ちゃんはもう由紀ちゃんと付き合ってるんじゃないの?」


「それがまだなん」


「まだなのかよ」

香澄
「蓮くんがわかってないっぽいもんね」


「そう。意外に鈍いんだよアイツ」

一舞
「なんだ…まだなのか」


「一度は告られた人がそういう事言っちゃだめよ」

一舞
「いやあたしは、由紀ちゃんに幸せになってほしいだけで…って、え!なんで知ってるの?」


「一卵性だから」


「適当だなおい」

香澄
「なにげに仲良し双子だから、洋くんが上手いこと聞きだしたんじゃないのー」


「まあなんだかんだ言って、この頃は毎日朝晩一緒に登下校だからな。満更でもねぇだろアイツ」


「そうなんだよ、あの仏頂面でさぁ『由紀が待っている』とか言って〜、毎朝超急いで家出てくのがもうおっかしいのなんの」

香澄
「さっきの写真事件の時だって、ゆっきーがメールしただけで飛んで来たもんね」


「そうそうふひゃひゃっ、俺等のとこにも急いで連絡寄こしてさぁ」


「あれ、自覚ねぇけど相当だぞ」

一舞
「へぇ…」



 こんな時だというのに、みんな関係の無い話で盛り上がっている。

 仲間が居るとこうやってなんでもない事みたいにしてくれるから助かるけど、ちょっとだけ、ネタにされている蓮ちゃんが可哀想にも思えたり…。




 今頃は涼ちゃんが、美樹ちゃんからの尋問に苦戦している頃だろうか。

 あたしが此処に居なかった過去に、彼が何をしていようとそれはあたしが干渉できる問題では無いけれど…めぐちゃんという人柄を考えると複雑だ。

 彼女はとても、女の子らしい人だから。

 もし涼ちゃんとの間に何かがあったのならそれは、とても辛い気持ちを抱えていた事実なのではないかと思うんだ…。



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