歪曲4 デビューアルバムの売り上げが新人としては比較的多かったこともあり、メンバーの顔出しは多くの人が待ちわびたものだった。と、誌面には書かれていた。 特に翔くんのヴォーカルは特徴的で、ライヴハウス時代を知らないファンにとって、その声の主がどんな姿なのかという興味がまた、楽曲の売り上げにもかなり影響していたという話。 更に今朝あたりから街頭でチラホラ見かけるようになった《APHRODISIAC》を起用した広告や、それに関連するタイアップ。露出は飛躍的に多くなり、ゴールデンタイムの音楽番組ではデビュー曲と共にアー写が公開され、深夜枠では翔くん単独でのインタビューや、曲解説のためメンバー全員でのインタビュー映像も放送された。 所属事務所の力の大きさが伺える推しの強さ。翔くん達が今までラブコールへの返事を渋っていた気持ちが良くわかる。 ネット上でも話題になった事で、今回のスキャンダル公開を企んだようだが…。 俺達から見れば、過去の話よりも、現在進行形の話の方が問題だ。 涼 「…恋人の存在が発覚って」 蓮 「…相手は若手のピアニストだと書いてある」 涼 「…ああ」 記者の狙いは何なのかわからない。 過去のスキャンダラスな生い立ちと比較して、現在の誠実さをイメージさせたかったのか。単純に悪いイメージに陥れたかったのか。 どうせ話題を独占したかっただけかもしれないけど… 蓮 「ピアニスト…透瑠さんが何か、一枚噛んでいるような気がするんだが。どう思う?」 涼 「…わかんねぇ」 兄貴は今、海外遠征中だし。何か知っていたとしても聞きだすのは難しい。 それにヒントは『ピアニスト』じゃないんだ。 (長い黒髪で、お嬢様風の美人…) 一舞じゃないなら、思い浮かぶのは一人しかいない。 だけど今更、あの人とのよりが戻ったなんて事があるだろうか? 蓮 「…アイツの様子がおかしいとは思っていたが。まさかこういう事態だったとはな」 涼 「…ライヴ前に話聞いてみるか?」 蓮 「……いや。モチベーションを保とうとしている可能性が高いからな。邪魔するわけにはいかない」 涼 「…だよな」 一舞の事だ。俺達が心配すればするほど心中は明かさないだろう。 (顔には出てるんだけどな…) だとしたら、問題の当事者に聞くしか選択肢は無くなってしまう。 涼 「とりあえず…兄貴が帰ってくるまでは保留にさせてくんねーかな」 蓮 「なんだ、留守なのか」 涼 「うん。今パリ」 蓮 「……」 俺等だけでどうこう言ってたって始まらない。 直接事務所にでも乗り込んでみるか。 会わせてもらえる保障なんか無いけど…。 Novel☆top← 書斎← Home← |