元彼2 無駄に整った幼なじみの顔を睨みつけて、独りで暮らすには広すぎる豪邸を後にする。 ゆっくりな足取りで学校へ向かう間、さっきの疑問が頭を駆け巡った。 一舞が何故、翔くんの家にいたのか。何故、俺に謝るのか。 (あんなことしたのに…) 俺がこうして朝っぱらから翔くんの部屋をたずねるのには理由がある。 一期生が作った《バンド部》と簡単に名付けられている組織がその原因。初代部長は翔くんで、今は4代目の俺が引き継いでいる。 学校内最大の人数を有する部活動であると同時に、いわゆる生徒会の役割も兼ねているバンド部。部長は無条件で生徒会長の役割を担うことになる。 このシステムを作った張本人が、今一番の悩みの種だ。 ライブハウスの運営や学校行事の全てを仕切る日常と、まったくライブに参加しなくなったヴォーカリストの世話。それが今の俺の仕事。 だから、ぶっちゃけ俺は忙しい。一舞のことでどうのこうの考えてる場合じゃないんだ。 バンド部の本部は、俺が一舞に酷く嫌な思いをさせたあの部屋…思い出すと後悔が押し寄せる…。 (いったい何がしたかったんだ俺は…) 確かに憎いとか思ってたけど、押し倒してどうこうなんて考えてもいなかったのに…。 無意識の行動だとしてもヤバすぎる。それなのにアイツの方から謝ってくるなんて、意味不明だ。 そもそもあんな場所で会うなんて反則すぎるだろ。心の準備もクソもあったもんじゃない。 嫌な思いならした。あの言葉は傷ついた。でもそれが誤解だった…のか? また俺の悪い癖か…? (だけどだからって、今更どうしろっつーんだよ…) あの頃の…ただ純粋に一舞を想ってた頃の俺とは、今は違うのに…。 Novel☆top← 書斎← Home← |