迷求5




 洋は、「一卵生ナメんなよ」などとふざけた言葉を吐きながら、いつになく真顔で俺の目の前に腰を下ろした。



「…何の用だ」


「んー…涼と美樹のコンビが心配してっから」


「フンッ…ずいぶん上から目線だな」


「あ。あと由紀ちゃんもな」


「…………」


「なんでお前、由紀ちゃんのこと避けてんの?」


「……貴様には関係ない」


「関係無いわけねーし。毎日お前の代わりに由紀ちゃんの送りやってんすけど、俺」


「……《一卵生》なら察しろ」


「うーわっ…なんだよそれ」


「…………」


「俺でもわかるように説明しろって」


「…貴様…俺の性格はわかってるな」


「うん…まぁ…そのつもり?」


「……だったら。俺が昔、美樹にした事の理由がわかるか?」


「……」


「俺だってあの頃、あんな風にしたかったわけじゃない」


「………」


「あの頃、俺は美樹を…突き放しきれなかった…」


「……」


「自分を制御する自信が無い。由紀にまで同じ事をしたくない」


「…………ふぅん。まさかお前、まだ一舞のことでウダウダしてんの?」


「答えは貰った。だから消そうとしている」


「……なるほど」


 洋は少し考えるような素振りで空を見上げる。そして小さな溜め息をひとつ吐き、俺の方へ目線を戻した。



「んー、まっ…とりあえずさぁ。由紀ちゃんと?ちゃんと話し合ったほうがいいんじゃねーかと…思うんだけどー」


「……」


「お前の考えてる事全部。正直に話してあげたほうが、由紀ちゃんも納得してくれると思うんだよね俺は」


「………」


「あの子、蓮の事が好きなんでしょ?」


「…そう言われた」


「だったらせめて、側に置いてやりなよ」


「………」


「送りの時に色々話してわかったけど、俺はあの子の気持ちわかるし…」


「………」


「お前の側には、誰かが居てやらないとダメだと思うし」


「…………」


「お前みたいな可愛くねー野郎に、あんなに一生懸命になってくれる子なんてそう居ないよ?ちゃんと腹の中見せてやれって」


「…仲良しゴッコでもしろって言うのか」


「うるせー甘ったれ」


「……」


「一番それが必要なのはお前じゃん」


「……」


「あの子の気持ちに応えるのは何も、付き合うとか付き合わないとかいう選択肢だけじゃないって。俺は言いたいんだけど」


「………」


「ま。あとは自分で考えて決めたらいいんじゃね?」


 そこまで言うと立ち上がり、洋はその場を去った。



「……」
(選択肢…か)


 今日の空も快晴だ。

 そんな…俺の心とは裏腹な空を見上げ、置いて行かれた言葉の意味を…考えていた。






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