迷求4




 手を繋ぐことを許すのも、泣いた時に抱きしめるのも、わかりやすい優しさという見本を真似しているだけに過ぎない。

 だからそこには、何の感情も存在しない。そう思っていた。

 だが…俺にとっての由紀という存在は、頼れる仲間であり、可愛い後輩であり、素直に言葉を受け止めてやろうと思える貴重な存在だ。

 だからこそ、断りもなく触れて来ようが口答えをしようが俺は許せる。

 ましてや好かれているとわかって嬉しいと感じている俺は、少なからず由紀を、近い異性として認めていたんだろう。

 そう考えれば…この先俺が、由紀に恋愛感情を抱く可能性は…まぁ、無いことも無いんだ。

 しかしそれは、俺の心に誰も存在していなければの話。

 困ったことに、俺の心から《一舞》という存在が出て行ってくれない。

 おかげで毎日、眠ることにさえ苦労する。


 昨夜気づいた俺の甘えた心も問題だ。

 いったい由紀に何を求めてるというのか、まったくダメな男だな俺は。

 やはりこれ以上アイツに甘えるべきじゃないんだ。

 今までの俺を振り返れば、もう側には居てやれない。必ず傷つける結果を生むとしか考えられない。



 由紀から気持ちを告げられた夜からもう一週間。由紀とは話していない。

 部活の時も手伝うのをやめたし、家までの送りは洋と美樹に頼んだ。

 洋には不満をダラダラと言われたが、美樹は察してくれた様子だったから問題は無いだろう。

 こうやって距離を置いていれば、いつか由紀の心から俺は居なくなれる。そう思いたい。


 人目を避けるように、新しい場所で独りの時間を過ごす昼休み。

 部室の窓から広がるテラスのその死角。ここからも空は綺麗に見える。



??
「…どんだけ独りが好きなんだっつの」


「……」
(…まったく…ウザい奴だな)


 声に振り返れば…屋内から顔を出し、俺に向かって指を指している洋の姿。



「……俺を見つけるな」


 せっかく独りになれたと思ったのに、うまく隠れている俺を、どうしてかコイツだけはいつも探し当てる。



「つーか根暗ってやつぅ?」


「…思慮深いと言え」


 これが双子の不思議なのか。まったく迷惑な…。





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