休日6



 独り。だだ下がりのテンションで夜道を歩く。

 そんな俺の携帯電話を鳴らしたのは由紀だ。


 夏休み直前のあのイベント以来、俺はたまに由紀の様子を知るため連絡を取っていた。もちろん夏休みの合宿中も…。

 由紀に責任者を任せたのは俺だし、あのオドオドとした態度だ。他の部員にナメられて仕事にならない可能性を考えたからだ。

 それからというもの由紀は、事あるごとにメールを寄越す。

 それは部活の相談だったり、ちょっとした愚痴だったり…アイツにしては度胸がある。

 届いたメールには気が向けば返信するが、ほとんど返さないことの方が多い。

 単純に俺が面倒だからというのも理由の一つだが、必要性を感じないのに返すのもおかしいだろうと思う。



「…」


 そして今回の内容は、相談でも愚痴でもないらしい。



――――――――――――

こんばんは

先輩、今日は何してましたか?

私は、お天気が良かったので家の庭でひなたぼっこしてみました。
日焼けしちゃったけど気持ち良かったですよ(^^)


…それと
ゆうべは迷惑かけてすみませんでした。

――――――――――――




「…?」
(なんだコレは…日記か?)


 というか、休日に俺が何をしていようが、由紀が何をしようが…まったく関係ないだろう。



「……」
(……まぁ多少、和んだ)


 だが待て、迷惑なんかかけられた覚えが無いな…いったい何の話をしてるんだ?

 ついつい浮かんでしまった疑問に耐えられず、珍しく返信画面を開く。



――――――――――――

迷惑とは何の話だ?覚えが無い。
必要の無い謝罪はするな。

それから今日の俺は、男ばかりで色気の無い話し合いをしていただけだ。
こんな事を知って楽しいか?

とりあえず、日焼けはしっかりケアしておけ。
仕事に差し障りがあったら困るからな。

――――――――――――



「…」
(我ながら無駄な事をしてしまった…)


 送信ボタンを押してから多少後悔する。

 それにしても今日は何なんだいったい…変な一日だった。


 珍しく返ってこない由紀からの返信を不思議に思いながら、無言のまま自分の家に帰り着いた。






prev * next

Novel☆top←
書斎←
Home←


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -