休日3





「思ったより片付いてんだな。つーか狭くね?」

祐弥
「いや、まぁ…安アパートやし…すんません」


「貴様の部屋が広すぎるんだ。一般常識を考えろ」


「あ、そうなの?」


 キョロキョロと部屋中を見回して、なんとも落ち着きがない馬鹿が居る。

 ファミレスを後にした俺たちは、嫌がる笹垣を促して、独り暮らしをしているというアパートの一室にやってきたのだ。

 涼の言う通り確かに狭い。俺や洋の部屋よりも狭い居住空間ではあるが、一人ならば充分な広さ。そしてなかなか片付いている。


祐弥
「…とりあえず茶でも出しましょか?」


「必要ない」


「いいよ。今腹いっぱい食ったばっかりだしな」

祐弥
「そっすね…」


「いいから座れ。俺達まで落ち着かない」

祐弥
「…」


「そうそう。ゆっくりしようぜー」

祐弥
「…はい」


「…」


 俺には返事もしないのがまた可愛くないな。



「で?…何の相談を始める気だ?」


「あー、つーか禁断のナントカってやつ」


「…何言ってんだ。わかるように言え」


「だから、祐弥も一舞なんだってよ」

祐弥
「!!」


「……それが何だ。分り切ったことを…」

祐弥
「えー…?」


「な?気づいてたろ?」

祐弥
「本人より先に気づくて、どういう嗅覚やねん…」


「やっと自覚したのか。鈍いなお前も」

祐弥
「自覚したから困ってんねやんか…」


「そんなもの知るか。それを話し合ったところで何になる?翔さんに勝負でも挑む気なのか?」

祐弥
「む……無理やわー…」


「うん。自殺行為だろうな」


「少なからず考えてはいたわけだな」

祐弥
「いや…そういうわけとちゃうけど…」


「グニャグニャモジモジするな、気色悪い」


「つーか一舞の話はいいとして、お前今までそういう女いなかったの?」

祐弥
「…付き合うとかそういうのは無かったことも無いっすけど、好きとかいうのはようわからんかって」


「ほう…ヤる事だけはヤッていた、と」

祐弥
「!…もっと言い方っちゅうのがあると思います」


「へー…」


「…つまらん話し合いだな」


「だから、祐弥と蓮の関係修復の会なんだって。はい、武勇伝いっとけ!」


「…貴様の武勇伝はまだ聞いていない筈だが?」


「お、俺のは後」


「俺の後に話すのか?勇気があるのか馬鹿なのか…」

祐弥
「……」


「……じゃ、じゃあ。先に話す」

祐弥
「何の暴露大会なん…?」


 狭い室内。男三人が輪になって、くだらない下ネタ暴露大会。

 ここに由紀や一舞が居たら確実にドン引きだ。美樹あたりは怒って帰るところだろうな。

 だいたいこんな話をしてしまえば、自分の性癖もその行為の手順もバレてしまう恐ろしい晒し合いだ。中学時代、一舞が入る前は、メンバーの親睦を深めるためとかいう名目でよくやっていた。

 とはいえ、女みたいな顔してなかなか下半身のヤンチャな涼の話。笹垣の、髪の毛よりも色付いた赤面が面白い。あの頃の赤面担当は専ら涼と照だったのに。

 さて俺は…どの過去を晒してみようか。どうせならとことん引かせてやろうじゃないか。


 黒い笑いを顔に張り付けて、生意気な後輩の赤い顔を眺めながら、貴重な休日の午後は過ぎて行った。







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