休日2




 女との待ち合わせに、昔はよく使っていたファミレス。

 それ以外に使うことの無かった場所だが、まったく変わらない雰囲気に妙な懐かしさを覚えた。

 店内に入り奥へと進めば、見慣れた黒いパイナップル。その向かいには何故が一舞と同じ赤い髪。


(何故、笹垣まで…?)


 ゆっくりと近づけば、2人の話声が難なく聞こえてくる。

 観葉植物の影から覗いてみれば、どうも笹垣の顔が深刻だ。おかげで出ていくタイミングがなかなか掴めない。


祐弥
「…まだ告ってないんすかあの人?」


「いや。ついこの前、決着ついたみたいだぞ」



「?」
(何の話だ…?)


祐弥
「え……てことは」


「あぁ、一舞がまだ翔くんとくっつく前な。俺は一舞から聞いたんだけどさ」



「…」


祐弥
「なんや…そういうことですか…」


「…」
(まさか、俺の話か?それにしても笹垣の奴…敬語らしきものも使えるんじゃないか。俺には思いっきりタメ口のクセに…)



「一舞は蓮を大事に想って断った。蓮は一舞を大事に想って諦めると決めた。どっちも正直に決断を出しただけだ」

祐弥
「……」


「だから友達でいられるんだ。まぁ俺もそうだけど…って、ついでみたいだな」

祐弥
「………」


「…」
(まったく…なんなんだコイツらは)


 真昼間から男二人で飯を食いながら恋バナとはな…しかも俺のネタまで引っ張り出してどういうつもりだ?



「おい」

涼&祐弥
「!!!!」


「それは本人の居ないところでする話なのか?」


「なんだよビックリすんじゃん」


「フン、悪趣味な奴らだ…恋愛相談なんて吐き気がするぞ」


「まぁそう言うなって。お前ら2人の仲もなんとかしたいんだから」


「…は?」

祐弥
「なっ!涼さん!?」


「なんだお前…そんなに俺に虐められたいのか」


 ちょうど2人の間にある椅子へと誘導され、メニューに目を通しながらなんとも可笑しくなった。

 ふとこぼした俺の笑みに、笹垣が不機嫌そうにしている。


祐弥
「…なに笑てんねん、上から物言うなや」


「そりゃあ上からにもなるだろ。《先輩》だからな…年齢も、女関係においても…フッ」

祐弥
「うっ…!」


「言い返せないのか?…そうか。図星か」

祐弥
「あー!もー!ほんっま性格悪いなアンタ!」


「そう褒めるな」

祐弥
「褒めてへん!!」


「まあまあ…店ん中で騒ぐなって。つーか飯終わったら場所変えて話したいんだけど、どうする?」

祐弥
「…え?なんでですか?」


「…」


「ん?あぁ…蓮と話すなら、ここじゃ気ぃ使うからな」

祐弥
「…だからなんで?」


「…わざわざ俺を呼び出してまで恥ずかしい恋バナを展開したいんだろ?ならば、もっとリアルな話が聞きたいだろうからな。ここじゃ内容がエグすぎる」


「あははは!お前どんな話する気だよ!」

祐弥
「…ほんまや怖っ」


「…お子様にも分るように事細かく教えてやるよ」

祐弥
「いやいやいや!いらんし!」


 あくまで態度の悪い後輩と、わざわざソイツの相談に乗ってやろうなどという人の良い馬鹿と共に、家族連れの多い店内で食事を済ませる。

 こんなのどかな休日に、家族以外の人間と食事をするのは夏休みの合宿以来だが。まあ気分は悪くない。

 食事を終えると俺たちは、嫌がっている様子の笹垣を促して店を後にした。




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